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ネットワークオーディオラボ ぶろぐ

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ハイレゾ時代の新コーデック『LDAC』の可能性

はじめに

 さて、今回はXperia Z4 Tabletに採用が決まったことで注目度が高まりつつあるLDACについて解説をしていきたいと思います。

LDACの辞書的な定義はBluetoothのオーディオプロファイル(A2DP)で利用できる新しいコーデック、といっても分かりにくいのでサクッと書くと『音声データをどういう風に圧縮して(しないで)飛ばすか』って話です。

要約

  • LDACの音質はapt-Xに比べて若干の進化が見られる。
  • 目指すべきは理想化された状況での絶対的な音質向上ではなく、Bluetoothが現実に使われる環境での相対的な音質向上では?Bluetoothが使われる環境を考えればapt-Xが優位。

この業界の標準はSBCという方式ですが音質劣化が凄まじく大きいことがオーヲタの間では有名で、より音質的に有力な方式としてAACやapt-Xといったコーデックが提案されてきました。(詳しい話は過去の記事を参照)

LDACは最大でSBCの3倍の情報伝送量を誇っており、これまでよりも高音質の音声が楽しめる一方、遅延に関してはSBCと同程度なので遅延に関してはapt-Xに一日の長があるかなという印象です。コーデックなので当たり前ですが音の受け手と送り手両方がLDACに対応していないと恩恵は受けられない&LDAC対応製品は現在のところSONYのみ(SONYが開発したので当たり前だけど)、ライセンス化するみたいなので抱え込みしないのはありがたいけど先行きはまだ不透明というのがデメリットといえばデメリットです。

試聴

今回はNW-ZX2からFLAC96kHz/24bit・192kHz/24bitの音声データを990kbbs(なんで990kbbsが最高かって言うとBluetoothは規格上1mbbs以下にしないといけない制約があるからなんです。)で飛ばして、

 MDR-1ABTに再生してもらいました。音飛びやノイズの影響を防いで990kbbsを最大限活かすため防音室で試聴・・・なんか実用的にはそうじゃないだろ感がしなくもない環境ですが(笑)

SBCとの違いは明らかなので、比較対象は以前にやったapt-Xと有線にしました。ワイヤレススピーカーのSRS-X55はLDAC対応ですが何故かハイレゾ非対応というちチグハグな製品なので今回はレビューしません(だったらせめてapt-Xにも対応させなさいよっていう)。

 

ソニー ワイヤレスポータブルスピーカー ブラック SRS-X55/B
 

 感想

まず元データの再生周波数の違いはさっぱり分からず(これはapt-Xでもそうだった)、apt-Xとの比較でボーカル音は確かにLDACのほうがいいと思う;より滑らかに聞こえました。音質は高音・低音ともに非常にしっかりと鳴らせていましたがapt-Xととの違いはあまり分からず、敢えて言えばやや低音域の厚みがちょっと増したかな程度;高音のキレ感はBluetoothでは無理だと思う。有線接続との比較で行くと音場感(立体感)はどうしても失われてしまう(音場感スバラCみたいなレビューをたまに見ますが個人的にはあり得ない感想)ので、やっぱりここらへんがワイヤレスの限界かなという印象。そもそも遅延が起こりにくい環境を頑張って作って試聴しているので遅延については不明。

まとめ 

ハイレゾのための新コーデックという位置づけで確かにこれまでのコーデックよりも音質の向上に成功したLDAC。ただハイレゾを求めている人間からすると「これまでハイレゾはワイヤレスでスカスカにしか聞こえませんでしたが、これからはCD音質程度で聞けるようになりました」と言われて食指が動くかというと・・・。Bluetoothが使われる場面で一番意識すべき外部環境からの干渉、遅延に対する脆弱性はそれほど既存コーデックから改善されておらず、理想化された状況での音質向上を目指す今の方向性ってなんか違うんじゃないの?という感想。自宅内でポータブルスピーカーって使い方はまだ説得力があるものの、僕らはみんなもっと優秀なネットワークオーディオ環境組んじゃってるんだよねっていう・・・。

今後のSONY製品がapt-X非対応LDAC路線に突き進むのだけは避けて欲しいし、もしそういう方向に行くのであればMDR-1ABTはapt-X対応の最後のヘッドフォンになったりするのかしら(そうならないことを切に祈っております)。

追記

アスキーさんから同趣旨の比較記事が出ました。

 

 

続: アンプって結局何なの!??

 

上の記事に対する反応として、もう少し詳しく書けと友達に言われたので、少し追記します。本当は試聴比較の項目でついでに書く予定でしたが。

 

アンプはスピーカを駆動させるために音声信号の電力を増幅・・・みたいな話を書きました。じゃ、具体的にどのくらい増幅すればスピーカーは鳴ってくれるのか?これはスピーカーによって違うので具体例を使って説明してみましょう。まずはスピーカー:

JBL STUDIO230 BRN 16.5cm 2ウェイ 【ペア】

JBL STUDIO230 BRN 16.5cm 2ウェイ 【ペア】

 
DALI スピーカーシステム  ZENSOR 1 ライトウォールナット ZENSOR1

DALI スピーカーシステム ZENSOR 1 ライトウォールナット ZENSOR1

 

 メーカーのHPに飛ぶと、

JBL STUDIO230は

DALI ZENSOR1は

 とあります。次にアンプです。

Pioneer インテグレーテッドアンプ A-70

Pioneer インテグレーテッドアンプ A-70

 

 TEAC

定格出力
  • 40W+40W(4Ω)
  • 20W+20W(8Ω)
スピーカー適合インピーダンス
  • 4 Ω-8 Ω

Pioneer

定格出力
  • 90W+90W(4Ω)
  • 65W+65W(8Ω)
スピーカー対応インピーダンス
  • 4 Ω-16 Ω

 

出てきた用語はスピーカー側が推奨アンプ出力とインピーダンス、そしてアンプ側が定格出力とスピーカー対応インピーダンスでした。以前にも書いたように、インピーダンス(単位はΩ:オーム)とは電気抵抗のことで、これが高ければ高いほど電流が流れにくくなります。一般にインピーダンスは高いほど音質的に有利です。電力(単位はW:ワット)は電流×電圧なので、電流が半分になれば電力も半減します(一定の電圧のもとで)。と、ここまで書くと大体分かりますね。

  1. スピーカー側:スピーカーはそれぞれ固有のインピーダンスを持っている(8Ωや6Ω)
  2. アンプ側:どれくらいのインピーダンスを持ったスピーカーを安定して駆動できるか;スピーカーインピーダンスがアンプのスピーカー対応インピーダンスの範囲外だと伝わる電力が大きすぎたり小さすぎるので動作が不安定になります。
  3. アンプ側:スピーカーのインピーダンスが(4Ω、8Ω)の時に最大でどれくらいの電力が流れるのかを確認するのが定格出力の項目
  4. スピーカー側:電力量がどの程度であれば安定して音を鳴らせるかの目安が推奨アンプ出力

例1:JBLのスピーカーとTEACのアンプの組み合わせ

JBLのスピーカーは8Ω、TEACの適合インピーダンスは4-8ΩなのでOK、定格出力は8Ωで20W、推奨アンプ出力は20-225WなのでOK

 例2:DALIのスピーカーとPioneerのアンプの組み合わせ

DALIのスピーカーは6Ω、Pioneerの対応インピーダンスは4-16ΩなのでOK、定格出力は4Ωで90W、8Ωで60Wなので出力は60Wー90W、推奨アンプ出力は25-100WなのでOK

※一般にアンプの出力はある程度余裕を持っていることが好まれます(スピーカーの能力を充分に使うため)。この観点からすると例1のケースでは推奨出力ギリギリの出力になるため、実際はもう少し出力の大きいアンプを使ったほうがいいよ、ということになります。

 

アンプって結局何なの!??

はじめに

皆様こんにちは、yamanatanです。最近は先日発表されたSONYの新型ハイレゾウォークマンNW-ZX2の試聴レビューを早くやれとか、新コーデックLDACの音質チェックやるんですよね?とか会った人に色々言われるので、また近いうちにやらないとな~とか思っています。

さて、今日取り上げるのはアンプです。というのも、以前に書いたこの記事 

を読んだ人から、「アンプって色々な種類があってそもそも何を買えばいいのか分からないので教えてください」と頼まれたためです。それでは、いつものようにざっくりと解説してみましょう。

お仕事

 さて、そもそもアンプさんは何をやってくれるのか。以前書いた僕の記事の説明によれば(笑)

アナログ音声信号を増幅する専門家はアンプです。

とあります。教科書的な説明をすると、アンプというのはAmplifierの略で日本語をあてるなら増幅装置でしょうか。DACが変換してくれたアナログ音声信号はスピーカーを動かすほどの電力がありません。そこで、アンプがスピーカーを鳴らせる電力レベルまで信号を増幅してスピーカーを駆動させます。

 種類

実際のところ、実用上覚えておくべきアンプの種類は大きく2つしかありません。*1

  1. プリメインアンプ
  2. AVアンプ

 高校の物理学の授業を少し思い出すと、

電力=電流✖電圧

 でした。アンプは電力量を増幅するという話でしたが、実際には2段階

  1. 電圧を増幅
  2. 電力を増幅

 で電力を増幅します。ここで電圧を増幅するアンプをプリアンプ、電力を増幅するアンプをメインアンプと呼びます。プリアンプ部分では音声の調整(control)なども同時に行うため、プリアンプはコントロールアンプとも呼ばれます。一方、メインアンプ部分では電力を増幅しスピーカーを駆動(power)させるため、メインアンプはパワーアンプとも呼ばれます。プリメインアンプはプリアンプとメインアンプを統合(integrate)したアンプなのでインテグレーテッドアンプと呼ばれるわけです。

 プリメインアンプは左右2つのスピーカーを駆動させるので2ch出力です。一方でAVアンプは映像関連の出力も組み込まれていること、5.1chや7.1chに対応している結果として出力しないといけないスピーカーが増えるので、スピーカーの数に対応したプリメインアンプが組み込まれているといった点が違います。AVアンプのほうが多機能、多プリメインアンプで一見良さそうに見えますが、何度もこのブログで書いているように

  • 音声に関係のない映像関連の出力部分はノイズの原因
  • パーツが多ければ、それだけパーツ間相互干渉によりノイズが発生

 するため、ピュアオーディオ的には不利です。*2

要約

  • プリ(コントロール)+メイン(パワー)=プリメイン(インテグレーテッド)
  • (一般的に)プリメインアンプの音質>AVアンプの音質
  • (一般的に)プリメインアンプの機能性<AVアンプの機能性

おまけ

デジタルアンプ

今までの説明はアナログアンプでしたが、世の中にはこのブログでも時々登場するデジタルアンプ(D級)というものもありました。ものすごくざっくりと書くと

  • デジタル信号⇒DACアナログ音声信号⇒アナログアンプで増幅
  • デジタル信号⇒デジタルアンプで増幅

つまり、どの段階で増幅するかが違うということです。デジタルのほうが安価・効率的ですが、アナログのほうが音質が良いというのが一般的な印象です。ただ、最近はあまり変わらないと僕は思っています。

パワーアンプだけ

ヲタでもない限り、アンプで売れ筋を検索して出会うのはプリメインアンプです。だからあまり気にしなくてもいいですが、世の中にはパワーアンプ単独の商品が存在します(もちろんプリアンプも)。ということで、どうしてもどこかのメーカーのパワーアンプが気に入ってしまった人用に少しだけ書いておくと

  • プリアンプはなくても、充分な電圧でパワーアンプに入力されればスピーカーは動くし音も鳴る(充分の程度はアンプによる)。
  • その際、音声調整の機能がプレーヤー側に付いていることが必要(調整もしたくなければ別に要らないが・・・)。
  • どうして2段階で増幅するの?って疑問は、充分の程度がアンプによって違うからということで納得しておけばいいかと(実際はもう少し複雑だが)。

もう少し詳しく知りたい人向けに

 さいごに

って記事を書いて見せたところ、「結局何買えばいいの?」っていつものように聞かれたので(呆)時間のある時に売れ筋の試聴比較記事でもまた書きます。ではでは~。

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*1:実際は素子や回路構成などいろいろな分類がありますが・・・。

*2:もちろんプリメインアンプは概して良いパーツを使えるというメリットも有ります。

お年玉で買うべきミニコンポ4選

はじめに

あけましておめでとうございます。さて、お正月といえばやはりお年玉でしょうか。今や僕もあげる側ですが(笑)、やはりお年玉という響きには心湧き上がるものがありますね。僕が中高生の頃、お年玉で買うものといえばCDラジカセ・コンポの類でした。最近はCDの売り上げもいまいちですし、どちらかと言えばパソコン+Youtubeで音楽を楽しむ中高生の方が多いと思いますが、手軽さではやはり専門機が勝ります。ということで、今回は若干時代錯誤的かもしれませんが、ミニコンポを特集してみたいと思います。 

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2017年版書きました。(この記事は2015年版の古い記事です。)

2014年発売製品に関してはこの記事で、2016年発売製品に関しては下記の記事を御覧ください。

2016年版書きました。(この記事は2015年版の古い記事です。)

2014年発売製品に関してはこの記事で、2015年発売製品に関しては下記の記事を御覧ください。

要素

さて、僕が子供の頃のミニコンポといえば、カセット+CD+ラジオ+(MD)というのが標準的だったように思いますが、これらの需要は全てPC一台で完全にカバーできるようになりました。では、そんな時代にミニコンポを買うべき理由は?それは手頃な値段で気軽にいい音を楽しむ、この1点につきます。この気軽にいい音ってのが重要で、

  • いちいちPCを起動しなくてもいい
  • 普及帯の携帯再生機では出せない音

ってところをアピールすることで専門機は生き残っていかないといけないわけです。最近のコンポにはマストで備わっているドック(ipod/iphone/walkman)やBluetooth対応、USBなど、携帯再生機とのリンク再生機能はある種の妥協点として納得できなくもないですが、アクティブ(パワード)スピーカーとの差別化がしにくいってのが難点ですね。こうした点を考慮すると、買うべきミニコンポの特徴が自ずから見えてきます。それは、

  1. アクティブスピーカーに内蔵されているよりも性能の高いDAC&アンプ、もしくはデジタルアンプ
  2. 出来るだけいい(笑)パッシブスピーカー

ピュアオーディオの観点からすると、スピーカー内部に振動源のアンプを配置するのはそもそも自殺行為なので、こうした影響を排除できる一点を切り取ってみてもアクティブスピーカーよりもコンポのほうが望ましいわけですが・・・。

比較

今回はすべてCDを再生して試聴を行っています。使用している音源はいつも通りですがクラシック・エレクトロ・J-POP・ロック・JAZZなどジャンルに偏りが無いようにしています。(いつか試聴音源の特集もしてみたいですね。)採点ですが、今回は5人いたので、一人3点で合計15点満点評価しています。想定価格帯は3万円前後です。

X-NFR7

 価格.comの栄えある1位に輝いているONKYOさんのX-NFR7からいきましょう。SDカード対応が一部の層に受けているという話を店員さんから聞いてちょっと目眩がしましたが、そういう需要もあるんでしょう。

  • DACは44.1kHz/16bit
  • アンプは定格出力が19W+19W、実用最大出力が26W+26W
  • スピーカーはバスレフ型
  • ウーファー130mm A-OMFモノコックコーン
  • ツイーター:30mmリングドーム

FRシリーズ15代目なんですね、僕も昔何代目か知らないけど持ってた気がします。中音はよく鳴らせていると思いますが、全音域的に音が淡白です。スピーカーの性能で低音はうまく誤魔化せているんだけど・・・、高音のヌケ感はまぁまぁ。

  • 低音:2点
  • 中音:4点
  • 高音:3点
  • 合計:9点
ONKYO CD/SD/USBレシーバーシステム X-NFR7-D
 

 SBT-300W

 お次はSONYさんのSBT300W、ネットワーク対応でこの値段はすごい!

  • デジタルアンプで実用最大出力が50W+50W
  • スピーカーはバスレフ型
  • ウーファー:120mmコーン
  • ツイーター:25mmドーム

低~中音域は申し分なし、最近のデジタルアンプは本当に完成の域に近づいてきたんじゃないの?ってくらいノイズが少ないと思います。高音はちょっと作られた音に聞こえちゃうけど(僕は)あんまり気になりませんでした。残念なのは音の広がり、もうちょっといいスピーカー積んでくれませんか?

  • 低音:4点
  • 中音:3点
  • 高音:3点
  • 合計:10点
SONY マルチコネクトコンポ CMT-SBT300W

SONY マルチコネクトコンポ CMT-SBT300W

 

K-505-N

 ケンウッドのK-505、Kシリーズも昔持ってたなぁ・・・。

  • デジタルアンプで実用最大出力が25W+25W
  • スピーカーはバスレフ型
  • ウーファー:110mmコーン
  • ツイーター:25mmドーム

売れてないのはカタログスペックのせいなのか・・・中~高音のバランスは今回聞いた中では最高、低音の量感はやや不足しているけどスピーカーの質でしっかりカバー。ブランド力って大事ですね。

  • 低音:3点
  • 中音:5点
  • 高音:4点
  • 合計:12点

ネットの口コミによると高評価だったK-531の入出力の自由度がばっさりとなくなってしまったことが不人気の理由とも。確かに現在の価格差(1万円ほど)を考えると、僕でもK-531薦めちゃうな(笑)あと販売対象を若者に設定するならゴールドはいらないのでまだブラックのほうがいいですよ。シルバー1色展開でもいいし。(これは某同業他社で同じアドバイスをしたけど。)

 

EX-N1

iPodのDockコネクタiPhone5からLighteningに変更された関係で天板に取り付けられたドックを使えなくなったという大きなディスアドバンテージを背負ったミニコンポ、USB接続に対応しているので問題はありませんが、教訓としてやはり他社の規格を本体に採用するのはリスクがあるので止めよう(外付けにしておこう)ってのがあるかもしれません。

  • アンプは実用最大出力が50W+50W
  • スピーカーはフルレンジバスレフ型 85mm

繊細な高音の表現はウッドコーンならでは、逆にサイズも稼げず低音は完全に量感不足。アンプは良くも悪くも標準的。ネットワーク対応しているNX5がこの値段ならすぐに買うべきだけど。

  • 低音:1点
  • 中音:3点
  • 高音:5点
  • 合計:9点

 まとめ

もちろん実際には拡張性だとか、色々と付加価値を考慮して選ばないといけないんだけど、単純に音の良さならケンウッドのK-505が一歩抜けていた印象でした。(今回はレビュー対象外だけどコスパ考えるとK-531)ケンウッドは地味に良い製品作り続けている印象なんだけど、ブランディングが下手すぎるのでもう少しONKYOを見習ってがんばってください。余談ですがSONYのアンプとONKYOのスピーカーを組み合わせると一番面白い音が出ます・・・が、それするくらいならセパレートで揃えた方がいいので(笑)

デジタルアンプはもはや一昔前の安いだけでノイズありまくりの欠陥製品ではなくなりました。低価格・高音質の恩恵を最も受けやすいデジタルアンプ、ぜひ一度試聴すべきかと思います(今回紹介した低価格帯の製品でも十分すぎるほど再認識させられました)。ではまたノシ

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平面駆動型とは?

はじめに

2015年オーディオ業界で要注目のキーワードは何か、という話を知り合いとしていましたが、その話し合いの中で出たワードの一つが平面駆動型です。今回はヘッドフォンの音の鳴らし方、構造の復習をしながら平面駆動型の説明をしていきましょう。

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 復習

以前に、コチラの記事でも說明しましたが、ヘッドフォンの音の鳴らし方には大きくダイナミック型とバランスド・アーマチュア(BA)型の2種類があります。 細かい説明は過去の記事に譲るとして、結論だけ書いておくと

  • ダイナミック型:ストレートでグイグイ押すオーバースローのピッチャー
  • BA型:キレのある変化球でバッターを手玉に取る技巧派ピッチャー

でした。


今回紹介する平面駆動型はダイナミック型の一種です。ダイナミック型というのはボイスコイルが振動板を駆動させることで音を出す駆動方式でした。ここで振動板の形状が平面のとき、そのヘッドフォンは平面駆動型と呼ばれます。(僕は平面ダイナミック型と呼ぶべきだと思っていますが・・・。)

現在市場に出回っているダイナミック型の振動板は大半がコーン型、もしくはドーム型なので平面型の振動板は非常に珍しいということになります。(ちなみに参考で紹介している記事でコーン型=ドーム型と説明しているものがありましたが、厳密には間違っています;ボイスコイルの取り付け位置が違います。)

まとめ

 ダイナミック型は振動板の形状によって3種類

  1. コーンダイナミック型
  2. ドームダイナミック型
  3. 平面ダイナミック型

平面型の特徴

平面型の特徴を知るには、コーン型・ドーム型の発音メカニズムを知るのが一番の近道です。コーン型やドーム型が音を鳴らすときは、まず振動源であるボイスコイルが中心部で駆動し、その振動が外周部に伝播されていきます。この伝播にはタイムラグが発生するため、ゼロタイムラグの理想状態と比較すると歪みや音像定位に微妙な誤差が生じることになります。ここまで書くと分かるかもしれませんが、平面型では振動板全面にコイルが埋め込まれている(埋め込むことが出来る)ため、こうしたタイムラグが発生しません。振動伝播のラグが小さい、これこそが平面型の一番の特徴です。懲りずに野球のピッチャーに例えると、平面型は初速と終速の差が小さい速球を投げるということになるのだと思います。

実はこれまでにも平面ダイナミック型の製品は存在しており、必ずしも新しい技術・製品というわけではありません。ただ、能率が悪い(ちゃんと音を鳴らすにはそれなりに馬力のあるアンプが必要)という欠点のため、これまで一般にはあまり普及してきませんでした。しかし、最近は一般人向けにも安価で馬力のあるアンプが普及して来たという背景があり、さらに能率の悪さの改善された製品群が登場したことにより、にわかに活気づき始めているというのが最近の流れです。

まとめ

  • 平面型の特徴は初速と終速の差が小さい伸びのある速球
  • 外的・内的要因によって、ようやく普及の兆し

試聴

平面駆動型の特徴が分かったところで少し試聴をしてみましょう。今回試聴出来たのは、FOSTEXのTH500RPとOPPOのPM1の2機種です。参考ではHiFiMANのHE-560とAUDEZEのLCD-XCなども紹介、試聴されているようなので併せてチェックしてみるといいかもしれません。参照している記事ではOPPO「HA-1」が使われていたので、うちはパイオニアのU-05で試聴することにしました(個人的にはHA-1のほうが僕も好きですが・・・)。一番の注目点は(相対的に)低出力な製品と組み合わせても、ちゃんと能力を発揮してくれるかってところでしょうか。(実はB.M.CのPureDACも検討していたんですが、在庫なし&誰も持ってなかったので次の機会に・・・。)

Pioneer USB DAC  U-05

Pioneer USB DAC U-05

 

 TH500RP

 まずはFOSTEXのTH500RPです。FOSTEXのヘッドフォンは全体的に堅実で地味めなデザインの印象ですが、このデザインは・・・まぁいいや。音の特徴はいつもどおりのFOSTEX、変な味付けはなくモニターライクで全音域解像度重視です。こう書くと、そんなことない低音域重視だよっていう違う印象を持たれた方から反論されるかもしれません。実はこれこそ平面駆動型の音の特徴です。音密度が高いので一音一音にパンチ力を感じます。

ソリッド系かソフト系、どっちの鳴り方をするかについても真逆のレビューがネット上に見つかるので混乱される人がいるかもしれません。おそらくソフト系の鳴り方をしていると思いますが、音密度の高い高音は聞き慣れていないとソリッドに聞こえるので、こういうレビューの違いが生まれたのかなという印象です。

まとめ

平面ダイナミック型のレファレンス機として最適

FOSTEX プレミアムRPヘッドホン TH500RP

FOSTEX プレミアムRPヘッドホン TH500RP

 

 OPP-PM1

OPPOのPM1です。きっちりバランス接続で試聴スタートです。TH500RPよりは低音重視だと思います。解像度は文句なしですが、TH500RPと比べて際立っていいという印象は持ちませんでした。ただ音の臨場感の演出の仕方、音の奥行きの持たせ方が抜群に巧いヘッドフォンだと思いました。高音はややウェットな印象で、キレの良い高音が好きな人には少し歯切れの悪さが目立つかもしれません。

オッポ 平面磁界駆動型ヘッドホン(オープン型)OPPO OPP-PM1

オッポ 平面磁界駆動型ヘッドホン(オープン型)OPPO OPP-PM1

 

 OPP-PM2

PM1は少し高すぎるので現実的な購入の選択肢となってくるのがPM2、PM1を横に並べれば多少ともデザインで見劣りするもののチープな印象は受けませんでした。僕自身は試聴していませんが、メーカーが同じ中身だと言っているのだから同じ音なんだろうと思います。試聴した人で低音の満足度が違う、という感想を述べている人がいましたが、おそらくそれは個体差だと思います(笑)

OPPO DIGITAL PM2 平面磁界駆動型ヘッドホン(オープン型)

OPPO DIGITAL PM2 平面磁界駆動型ヘッドホン(オープン型)

 

  おわりに

 注目の2機種を聞いてみたが、既存のヘッドフォンの勢力図を塗り替えるほどの劇的なインパクトは無いなというのが正直な感想。同価格帯で平面ダイナミックと非平面ダイナミック型どちらを買うかと聞かれれば、まだ非平面ダイナミック型を選ぶと思います。しかしこれから2-3世代すれば間違いなく脅威になるであろう存在なので、一度は試聴しておくことをおすすめします。(話の種になるし)

ではでは♪

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photo credit: Jiuck via photopin cc

 参考