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ネットワークオーディオラボ ぶろぐ

ネットワークオーディオ・PCオーディオ・ハイレゾ音源関連の最新ニュースをお届け♪

2018年上半期オーディオ

はじめに

光陰矢の如しとはよく言ったもので、2018年も気づけばそろそろ折り返し地点ということで、Net Audioのライターズセレクションに触発されて、試聴メモを残しておくことにしました。

 marantz ND8006

ニコンポ記事でも再三触れているとおり、近年の音楽メディアはCDなどの物理メディアから音楽ファイル、特にハイレゾ音源への移行が急速に進んでおり、プレーヤー側も流れに即して急速にCDレスの方向に進んでいます。その典型がネットワークオーディオプレーヤーと呼ばれる商品群で、NASに代表されるサーバー内のファイルを再生する機能に特化しているものや、PC内のファイルを再生する際のDACを兼任するもの(USB-DAC)などが普及しました。その代表格がmarantzのNA-8005です。

これに対して、歴戦のオーディオラバーは、そうは言ってもCD・SACDコレクションを再生したいという希望があるわけで、こうした商品群をCDトランスポート(CDプレーヤー)といいますが、この代表格がmarantzのSA8005でした。

 

さてさて、ここでお気づきのようにどちらも再生しようと思ったら、わざわざ二台買って、さらにそれを重ねておかないといけないということで、

  • 費用
  • 物理スペース
  • 配線

 など、様々な問題が生じてしまいます。だったら、まとめて一台にすればいいじゃん、ということで発売されたのがND8006です(ただしSACDの再生機能はカット)。しかも価格は1台分(実勢価格でも2台買うよりは安い)だけでなく、チップはESS製のES9016K2Mを新たに搭載、操作アプリもHEOSに統合して取り回しがよくなるなど、非常に完成度が高い統合デジタルプレーヤーになっていました。

SACDに対応しないのは、あくまで“このクラス”に限定した場合、SACDに関心を持つ層が少なく、数万円のコスト増をユーザーに強いるよりは、価格を抑えたほうがユーザーメリットがあるという判断からだそうだ。

 marantzとESSの組み合わせは初ということで、どんな音になっているか注目でしたが、蓋を開けてみるとしっかりとESSの潜在能力を引き出せており、不満のない出来映えになっていると思います(USB-DAC)。また、アマゾンミュージックのストリーミング再生もお手軽でした(ぶっちゃけストリーミングだとGoogle Play Musicを使いたいのですが・・・)。

marantzがND8006を発売した背景には、ミニコンポ企画でも紹介したM-CR611の大ヒットが確実にあると思います(あくまでも予想だけど)。こちらはND8006にアンプも乗っかっていて、初心者にお手軽なオールイン製品、スピーカーに繋ぐだけで幸せになれます。一見するとこちらのほうがいい気もしますが、オーディオは基本的に「分けられるものは分けたほうが高音質」というのが鉄則なので、音質的にはやや不利になることは覚えておきましょう。

 

実際のところ、音質を左右するのはスピーカーとアンプなので、プレーヤーは多機能・操作性重視・デザインで選べばいいというのが個人的な意見。こうした評価軸とND8006は非常に相性がいいと思います。

  • オーディオ中級者以上で、ディスクリート構成を試したい(プレーヤーとアンプの組み合わせを追求したい)
  • とくに、M-CR611のユーザーで、より音質の高みを目指したい
  • オーディオ初心者だが、資金に余裕があるので、初めからよりよいシステムを組みたい

人達にはオススメの製品だと思いました。

 

マランツ「ND8006」レビュー。CDからハイレゾまでを忠実再現する新世代Hi-Fiプレーヤー (1/3) - PHILE WEB

ASCII.jp:これさえあれば? CDからハイレゾまで全対応の新プレーヤーほか──マランツ (1/4)

 HPL2 Processor Plugin

僕は音楽を聞く時はスピーカーを使うことが多い。理由としては

  • 音質的に有利
  • ムレ感や締めつけ感が苦手

程度問題こそあれ、ここはヘッドホンやイヤホンの欠点である。しかし、スピーカーを使えない環境で音楽を楽しみたいというニーズがあるのは間違いない。ここで問題となるのが、

多くの楽曲が、スピーカーで鳴らすことを前提に制作されているのも事実で、ヘッドフォンで聴くと制作者の意図通りの音ではない可能性もある。

という点だ。そこで、アコースティックフィールドという会社が

本来スピーカーで鳴らす意図でミックス・マスタリングされた音源をヘッドフォンで聴いても自然に聴こえるようにエンコード

し直す技術を開発した。これがHPL2と呼ばれるもので、以前からヘッドフォン祭参加者の間では知られていた技術だが、これを『無料で公開』したのが、HPL2 Processor Pluginである。

"なぜHPLで聴く音楽は気持ちいいのか?"

それは、音楽音源がスピーカーで気持ちよく聴けるように作られているからです。
HPLは、そのミックスバランスを崩さずにヘッドフォンやイヤホンで実現します。
何かを加えて気持ち良くするエフェクターではありません。
もともと気持ちの良い音をヘッドフォンやイヤホンでも正しく再生する、それだけを目指した変換技術です。​(詳細は本サイトの"ABOUT"をご参照ください)

細かい技術的な部分についてはav.watchの記事がよくまとまっているので参照されたし。ヘッドフォンラバーの諸氏で、まだ試していない人はすぐにお試しあれ。導入はやや面倒くさいが、記事でも触れられているように、フリーソフトのMusicBeeを使えば、完全無料でHPL2を試すことができる。

個人的な感想としては、やや音源のクリアネスが低下し、少し音が遠くなる代わりに、照準がしっかりと定まった音になるという印象を受けた。音像定位がよくなると言ってしまえばそれまでだが、立体音響の体験というのは独特で、好きかどうかにかかわらず一度は体感して欲しい。

 Deezer HiFi

音楽マニア垂涎のロスレス聴き放題サービス、月額1960円。Apple MusicやSpotifyのような圧縮音源聴き放題サービスとは異なり、CDクオリティの聴き放題サービスは国内では初(海外ではすでにTIDAL、Qobuzなどが先行しているが)。普及するまでは1ヶ月間の無料トライアルが利用可能なのは安心ポイント。

普段からハイレゾ音源を聞き慣れている人間からすると、音質に新たな感動こそないが、これが聴き放題でストリーミング再生なのかと妙に感心してしまう。

ある意味、ハイレゾ初心者にオススメのサービスかもしれないが、まともなオーディオ環境なしでハイレゾ音源を再生しても、あまり違いがわからないというジレンマ。ハイレゾ対応器を所有しているが、YoutubeApple Musicでしか音楽を聞いたことがない!なんて人がいればオススメ。

www.deezer.com

 

 

DACとは何か

はじめに

DACって何なの?」

PCオーディオ草創期に、色々な人から聞かれたのを思い出します。この質問を受けて書いた記事が以下のものですが、気づけば4年前なのか・・・。ちなみにこの質問をしてきた人の中には、オールドオーディオラバーの人も含まれていました。DAC自体はCDプレーヤーの中に組み込まれていたのですが、今ほど意識はされていなかったのかもしれません。

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photo credit: Nicolas Rénac Eclosion via photopin (license)

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 去年10月のNet Audioの特集「DACとは何か?」を見て、そんなことを思い返しました。ということで、記事を参照しながら久し振りにDACの話をしたり、最新トレンドを追ってみましょう。

DACとは

DACについての説明については、4年前の僕の過去記事を参照するのが今でも一番分かりやすいと自負しています。ポイントとして、

  • DACとはデジタル・アナログ・コンバーターの略で、デジタルデータをアナログ信号に変換する機械
  • DACがないと、PCでデジタル⇒アナログ変換を行うことになるが、PCはノイズだらけなので、「デジタル⇒アナログ信号+ノイズ」になってしまう。
  • そこでPCでは変換を行わずにDACで変換することで、ノイズを避けよう!

というものでした。

Net Audioの記事ではDACの重要性を強調しています。

  • DACとは、デジタルファイル再生にあたって最も重要なハードウェア的基盤である。
  • DACを知らずしてデジタルファイル再生は語れない

歴史

DACを飛躍的に進化させたのはなんと言っても⊿Σ(デルタシグマ)変調です。

  • 80年代末から90年代にかけて普及した1bit型DACが採用する⊿Σ変調である。
  • 大きなメリットの一つが可聴帯域内での量子化ノイズを可聴帯域外となる超高域へ追いやるノイズシェーピングだ。
  • 2000年代に入るとその技術もより洗練され、設計のしやすさや量産効果を含めたコストの点でも1bit型DACが優勢となっていく。

近年、オーディオマニアの間ではDSD音源が普及しています。僕も当初は懐疑的でしたが、2015年の中ごろにハマってしまい、こんなことを言っています。

ソフト面で去年一番投資したのが実はこのDSDで、「あんなもの流行らないね」みたいなことをずっと言ってたんですが、DSD信者から容量の(相対的な)小ささと音のクリアネスに関する長い長い洗脳を受け(笑)、気づいたらDSD音源買い漁ってたんですよね。

それなりに普及したこともあり、DSDって結局何なの?みたいな質問は結構あって、これはどのように音源が記録されているかの違いとして説明できます。まず、音声データのMP3、これは圧縮音源です。これに対して、CDやハイレゾでお馴染みのFLACなんかはリニア(非圧縮)PCM変調で記録されている非圧縮音源になります。非圧縮なので、当然ですが音質の劣化がないのが一番の魅力です。DSDもこの非圧縮音源の仲間なので、当然音質がいいわけですが、

  • PCMデータに関してはインターポレーション(内挿)フィルターを用いてサンプルデータの補間を行ってから⊿Σ変調を行うが、DSDデータではこの処理が不要であり、よりシンプルな回路を実現できるのが優位点だ。

という違いがあります。基本的にオーディオはシンプルであればあるほどよいことが多いので、無駄な内挿プロセスがないだけ、DSDは音質的に(サイズ的にも)有利になります。

メーカー

このブログでもたびたび扱っているDACチップのメーカーについて。オーディオマニアの間で定評があるのはテキサス・インスツルメンツ(TI)のバーブラウン(PCM**)とESS(ES**)、ここに日本の旭化成(AK**)やウォルフソン、シーラスロジックなどが食い込んできます。

こうした汎用チップに加えて、超高級機ではFPGAを用いたDAC回路も見られます。FPGAは簡単に言えばオーダーメイドの回路のことで、近年は金融の高頻度取引(HFT)やディープラーニング等の科学技術計算でも使われることの多いものです。DACチップはアナログ音源の味付けを変えるので、好みの音を追求するには、回路をいじるのが一番いいわけです。

バルク転送

現在マニアが注目しているバルク(Bulk Pet)転送方式、これはUSBのデータ転送にかかわる新しい方式のことで、これから普及していく可能性が高いです。

発想としては、Bluetoothの転送方式の話に似ていて、Bluetoothのデフォルト転送方式はスピード重視のSBCだった(そもそも音声を飛ばす目的ではなかった)わけですが、これでは音質の劣化がひどいということでapt-XやAAC、さらにLDACなんかが登場したのは以前書きました。

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同様に、USBについてもデフォルト転送方式はアイソクラナスという応答性重視の方式でした(やはり音声を飛ばす目的ではなく、マウスやキーボードの利用が主目的)。しかし、この方式は転送容量に波を生むため、DACに負担をかけてしまい、音質の劣化に繋がることが指摘されていました。そこでそうした不要な波を生まない連続的な転送方式を行おう、こうした目的で開発されたのがバルク転送です。簡潔に言えば、ガタガタした離散転送方式からなめらかな連続転送方式への移行ということになります。

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試聴

本誌では100万オーバーの最高級DACも試聴されていますが、さすがに一般人には厳しすぎるので、10万円前後の据え置き機に限定しました。パワーアンプはNuPrimeのSTA-9、スピーカーはやや力不足ですが、入手のしやすさと最近の人気を考慮して、今回はKEFのQ350を使いました。音源はFLACDSDです。

 
 

 micro iDSD BL 

2015年の記事で、なんでこの値段でDSD11.2MHzまで対応してるの!って驚いているiDSDの後継機、取り回しのしやすさや扱いやすいサイズも相まって、安定した人気です。チップはバーブラウンDSD1793×2。

  • ニュートラルではあったがややドライな質感であった前モデルに比べ、艶ハリよく質感の滑らかさが加わるとともに、どっしりとした低域の量感や締り感も向上。

とのことですが、個人的に艶ハリは感じられず、一方で全音域についてしっかりした正確な音を出しているように感じました。この辺りはスピーカーの味付け、スピーカーとの相性もあるでしょうが、さすがベストセラーだけあって、堅実ないいDACだと思います。

ちなみに、中級機としてxDSDが4月に発売されました。値段やサイズ、スペックは大ヒットとなったCHORDのMojoを意識しつつ、高級感をアピールしていこうといった戦略のようですね。チップは同じくDSD1793です。micro iDSD BLに比べると量感がやや落ちますが、モバイル用途なら十分だと思います。

 CHORDのMojoのチップはというと、汎用チップは使っておらず、さきほど超高級機で採用されていると紹介したFPGAが使用されているのが大ヒットの理由です。CHORDのフラッグシップ据え置きDACであるDAVEは150万円ほどしますが、こちらは6万円以下。据え置きで使うにはやや難がありますが、音の滑らかさはピカイチで、価格破壊感は相変わらずでした。音を大きくするとややジッターが気になりましたが、そもそもこの2機はモバイルDACなので、気にしなくてよいでしょう。

  • 無限に処理ができるフィルタを使って補完すれば、オリジナルの波形を復元できるというのが我々の考え方です。つまり、補完処理を増やしていけばいいのです。そのためには、フィルタのアルゴリズムを改良し、いかに効率的に処理を重ねていくかを重視しています

ASCII.jp:CHORD『Mojo』は、見た目からは想像できないほど過激なDAC、CEOに聞く

Hugo/Mojo/DAVE、CHORDは何故汎用DACを使わないのか? キーマンがこだわりを解説 - AV Watch

 marantz HD-DAC1

 こちらもmarantzのベストセラーDAC、marantzのフラッグシップはディスクリートDACを誇るSA-10ですが、50万円オーバーで需要がないでしょうから、こちらをセレクト。DACチップはシーラスロジックのCS4398です。2014年発売だけあって、ややスペック的に見劣りしがちですが、余裕があって非常に満足感のある音です。音の解像度は(フラッグシップ級と比べると)控えめで甘いですが、普通の人には十分すぎると思います。

OPPO Sonica DAC 

2017年聞いてよかったものでも紹介した超コスパSonica DAC、まさかのOPPOのAV事業撤退により販売中止になってしまい、プレミアがついてしまいました。ESSの旗艦チップであるES9038PROを搭載したスペックの高さ、10万円を切るコスパの良さは圧巻で、去年のオーディオマニアの話題になったことは記憶に新しいところです。プレミア価格でしか買えなくなったのは残念ですね。

僕はNuPrimeのファンであり、当然にESSのチップのファンでもあるため、圧倒的な解像度の高さを誇る本機の音も大満足でした。不満を言えば、音声再現能力に関してはバーブラウンのチップに一日の長があるかな、というところがあり(もちろんチップだけでは決まらないのであくまでも傾向ですが)、オーケストラに包み込まれたい!みたいなときには、やや物足りなさを感じることがあります。逆に打ち込み音源を聞く時などは、ESS圧勝で、ESSの右に並ぶものはないように感じています(CHORDのFPGA含め)。

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 さいごに

ということで、久し振りにDACの話をしてみました。DACはエンジニアリング的な要素が強いので、技術的な部分に興味があるなら非常に楽しい機構ですね(文系の人は嫌いかもしれませんが)。ちょっとマニアックになりすぎたかもしれませんが、楽しかったです。

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お年玉で買うべきミニミニコンポ2018

はじめに

例年恒例のミニコンポ比較に併せて、延長線でミニミニコンポ比較を開催しました。ミニコンポ比較企画は年々審査員にプロが増えていっており、全体的にピュアオーディオ寄りの構成になっていました。その結果、適切な金額を投資することで、コスパのいい音質を追求するという本来の趣旨とは整合的である一方、どうしてもシステムが高額化してしまう傾向にあり、初心者向け企画としては少し疑問符がともっていました。

そこで、VGPと同様に(2万円~)4万円以下と4万円~7万円の区分で審査するとともに、今年は初心者ライトユーザー層向け企画として、2万円未満ミニミニコンポの比較を追加で行うことにしました。1年間のウケを考慮しながら(お陰さまで通年で訪問頂いている記事なので)来年の方針を決めたいと思います。

ライトユーザー層の場合、音質はあくまでも評価軸の一つに過ぎず、デザインやサイズとの総合評価になるとは思いますが、こだわらなければPCやスマホで音楽が聞ける時代に追加的に支出するわけですから、音質はいいに越したことがないでしょう。なので、2機種で迷ったとき!などに参考にしてもらえると幸いです(もちろんピュアヲタ層でもサイズやデザインは重要ですが、相対的な重要度は音質が圧倒的に上)。

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photo credit: Beegee49 Hello Kitty via photopin (license)

 試聴環境

基本的に環境は本編と同様ですが、ハイレゾの代わりにYoutube音源を試聴しています。ピュアオーディオでは原音再生能力が重要ですが、Youtubeのような劣化音源を利用した場合、原音再生能力が高いとノイズが気になります。したがって、機器の補正能力が重要になってきます。一言で言えば、音楽マニアより映画マニアに近いシステム選びの方がハマるということです。この違いを象徴するブランドとしてBoseが挙げられます。ピュア屋からすると補正が利きすぎていて音が人工的に聞こえるので、Boseはあまり好きになれないわけですが、一般ユーザーからすると、補正の結果、いい音!に聞こえることがあるわけです。

ピュアオーディオのレビューを見ていると、「思ったよりも迫力がなかった、コスパ悪い」といった内容を見かけることがありますが、これも同様の理由です。人口調味料でしっかり味付けされた料理を食べ慣れていると、自然食品を味気なく感じることがあります(※人口調味料が悪いとは言っていません。TPOに応じて使い分けることが大事という趣旨です。質があまり良くない肉は強めに味付けたほうが美味しいし、高級な肉はシンプルな味付けの方が美味しいでしょう)。

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試聴機器

ベンチマークは本編からの刺客、KENWOODのK-505です。量感が若干不足しているものの、全音域に渡って満足度の高い製品。2015年発売で2世代前の製品になるため、非常にコスパが高くなっています。ピュアとは違う評価指標を使っているので、K-505を20点/25と基準化して、各製品の相対評価を行います。

  • (約2万)K-505(KENWOOD)2015

比較するのは以下の選手

  • (約1.2万)X-SMC02(PIONEER)2017
  • (約1.4万)X-CM56(PIONEER)2016
  • (約1.6万)X-U6(ONKYO)2016
  • (約1.6万)SC-HC395(PANASONIC)2016
  • (約1.5万)SC-HC295(PANASONIC)2016
  • (約1.1万)SC-PM250(PANASONIC)2015
  • (約1.7万)CMT-SBT40(SONY)2014

スペック

  • (約2万)K-505(KENWOOD)2015, 25W+25W, バスレフ, 110mmコーン型ウーファー+25mmドーム型ツイーター
  • (約1.2万)X-SMC02(PIONEER), 10W+10W, バスレフ, 80mmコーン型フルレンジ
  • (約1.4万)X-CM56(PIONEER), 15W+15W, バスレフ, 94mmコーン型ウーファー+50mmコーン型ツイーター
  • (約1.6万)X-U6(ONKYO), 15W+15W, バスレフ, 100mmコーン型ウーファー, 20mmバランスドーム型ツイーター
  • (約1.6万)SC-HC395(PANASONIC), 20W+20W, 65mmコーン型フルレンジ, 80mm*2パッシブラジエータ
  • (約1.5万)SC-HC295(PANASONIC), 10W+10W, 80mmコーン型フルレンジ
  • (約1.1万)SC-PM250(PANASONIC), 10W+10W, 100mmコーン型フルレンジ
  • (約1.7万)CMT-SBT40(SONY), 25W+25W, バスレフ, 95mmコーン型ウーファー+57mmドーム型ツイーター

結論

冒頭に書いたように、このクラスの製品を選ばれる方は、音質以外にも機能性やサイズやデザインを考慮して総合判断されると思いますので、こちらはあくまでも音質だけでの評価であることを強調しておきます。同じ点数でも音の味付けは多少異なりますので、試聴は推奨です。結論として、音質だけなら2万円出してK-505のデッドストックを狙うのが明らかに賢いと思いました(記事を出した直後、一時的にシルバーは3万円台に高騰していました)。対抗馬はSONYのCMT-SBT40、とにかく安く抑えたければPANASONICのSC-PM250といったところでしょうか。

  • 20(約2万)K-505(KENWOOD)2015
  • 15(約1.2万)X-SMC02(PIONEER)2017
  • 17(約1.4万)X-CM56(PIONEER)2016
  • 17(約1.6万)X-U6(ONKYO)2016
  • 16(約1.6万)SC-HC395(PANASONIC)2016
  • 16(約1.5万)SC-HC295(PANASONIC)2016
  • 16(約1.1万)SC-PM250(PANASONIC)2015
  • 18(約1.7万)CMT-SBT40(SONY)2014

個別レビュー

 X-SMC02

 一体型コンパクトに属する製品、このクラスの製品のアンプの出力は10W+10W、出ても15W+15W程度なので、そこまでパワフルさはありません。バスレフとあるのはスピーカーの種類です。小型スピーカーはサイズ的に低音が稼げないので、よほどのことがない限りバスレフ型と呼ばれる形状のスピーカーを採用し、低音を増幅させることで低音を稼いでいます(ヘルムホルツ共鳴)。バスレフ型の欠点は、低音を増幅させているがゆえに、音がぼやけて解像度が犠牲になることです。したがって、小型スピーカーで密閉型(これもスピーカーの種類)を採用している製品があれば、低音はきっぱり諦めて解像度を重視していることになります(ELACとかね)。

スピーカーはフルレンジのものとウーファー+ツイーターのものがあると思いますが、基本的に分かれていたほうが音質的には有利だと考えておいて下さい。本製品は中音域以外はこれといって見どころのない評価となっており、解像度・量感ともに物足りませんでした。評価は15/25となりました。

 X-CM56

50mmコーン型ツイーターでやや高音重視の構成、スマホや内蔵スピーカーとの違いは十分に感じられる製品だと思います。このクラスの製品に解像度まで望むのはお門違いというもの。評価は17/25となりました。

 X-U6

劣化版K-505といった感じで、非常にベーシックでやや無個性な音が流れてきます。評価は X-CM56と同じく17/25となりました。真のベンチマークはこの子です。

 SC-HC395

小型スピーカーは低音を稼ぐため、通常バスレフにします、と書きましたが、低音を稼ぐもう一つの方法がパッシブラジエータを使うことです。パッシブ(受動的)という言葉から想像されるように、自身が動くのではなく、動かされることで低音を増幅します。サンワサプライの図解が分かりやすいです。パッシブラジエーターの最大のメリットは解像度の低下を抑制できる点で、ラジエーターを活用した製品が得意なメーカーといえば、冒頭のBoseさんです。

パッシブラジエーターとは - サンワサプライ株式会社

 SC-HC395はフルレンジ+パッシブラジエーターの構成で、アンプが25W+25W。パナ製品ラインの中では若干異質な構成で、実験要素も入っている気がします。次世代に期待ということで、点数は16/25でした。

 SC-HC295

 X-SMC02と同じく10W+10W+80mmフルレンジの構成、やや解像度で稼いだ結果、 SC-HC395と同じ16/25となりました。

 SC-PM250

 上位機種が軒並み高評価高コスパなので、250にも期待が集まります。10W+10W+100mmフルレンジで、全音域、解像度など特に目を見張る点はありませんでした。点数はまたしても16/25となりました。残念ながら、上位機種のように音質が素晴らしいのに安い!という結果にはなりませんでしたが、実勢価格的にコスパは悪くないと思います。

 CMT-SBT40

 25W+25W+95mm+57mmとスペックは豪華だし高音は綺麗に出ているけど、K-505と比べると音像定位など細かいところに差が。評価は18/25となりました。いい製品ですね。

お年玉で買うべきミニコンポ2018

はじめに

前記事で告知させて頂いたとおり、今年も12月某日に都内某オーディオショップをお借りしてミニコンポ試聴会を開催しました。去年の参加者は8人だったんですが、今年は記事を読んで「俺も参加させろ」と奮い立った知り合いに段取りをテキパキと進めて頂いたおかげで、なんと今年の参加者は22人になりました(笑)。お陰で、例年よりも公平・公正な評価ができたのではないかと思います。

2019年版が公開されました。

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photo credit: Susan Melkisethian Tax Bill Protest at The Capitol via photopin (license)

前記事や過去記事にも吐露しているように、今やホームオーディオ環境は大きく変わり、再生機器・音楽ソースはCD⇒PC⇒スマホに、そしてスピーカーはコンポ付属のスピーカー⇒PCスピーカー⇒ワイヤレス(Bluetooth)スピーカーが主流になりました。各メーカーも完全に経営資源を引き上げているのが現状で、ミニコンポの存在意義はどんどん失われています。もはやこの流れを止めることはできないと思いますが、ピュアオーディオファンの我々(おっさん)としては、ピュア沼にはまるきっかけを与えてくれたミニコンポへの感謝と敬意を表し、ミニコンポをきっかけにして未来のピュア廃人が一人でも多く育つことを夢見て、この時代錯誤イベントを続けていくことを誓ったのです(とか言って来年はやらないかもしれないですが笑)。

それにしても、今後ピュア廃になる方はどういう経路で沼に沈んでいくのか、ちょっと興味がありますね。やっぱり高音質ワイヤレススピーカー⇒DAC⇒ピュアみたいな経路なのかなぁ。ヘッドホンヲタの人なんかはヘッドホン⇒アンプ⇒ヘッドホンみたいな無限地獄に陥っていて分かりやすいんだけど。

networkaudiolab.hatenablog.com

2万円以下のミニコンポをお探しの方はこちら

networkaudiolab.hatenablog.com

10万円以上のハイコンポをお探しの方はこちら

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10万円以内でPCオーディオを組みたいなら

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試聴環境

例年通りの完全防音、ピュアオーディオ試聴環境です。メーカーはブラインド、3人編成・ランダムな組み合わせで試聴して、先入観に左右されないような環境構築に努めました(ぶっちゃけ味付けですぐにどこのメーカーかは大体分かりますが)。

音源

  • MP3(192kbps)、CD(16bit/44.1kHz)、ハイレゾ対応機器にはFLAC(24bit/96kHz,192kHz)を使いました。DSDは見送りました。
  • 外部接続によるApple Music, Google Play Musicのストリーミング再生を評価対象に加えました。基本的にはMP3相当だと思います。

ジャンル

過去記事を参照して下さい。中音域のチェックのためにアニメソング、低音域~中音域のチェックのためにボカロ音源も追加で使用しています。

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試聴機器

  1. VGPに即して、実勢価格4万円、4万円~7万円の2部門制に変更しました(価格は記事執筆時点の最安値)。VGPでは7万円~も評価されていますが、7万円以上あればセパレート構成にすべきだろう、ということで外しました(このあたり、自作PCの香りが漂ってきますが、PCに比べるとパーツの選択肢と組み合わせによって実現できる性能の多様性はオーディオの方が圧倒的に上です)。
  2. CDトレイのない(CD、再生機能がない)デスクトップオーディオが増えてきましたので、今回から評価対象に加えました。この措置によって、企画の寿命がかなり伸びた一方、当初の企画コンセプトからは多少ブレました。
  3. 当初の懸念どおり、新製品がコンスタントに発売されなくなりましたので、過去にレビューした製品で後継機が出ていない製品は試聴対象に含めました。過去製品には以下のメリットがあります。(1)値下がりしているためコスパ的に有利(2)購入の際、価格.comamazon等の各種レビューを参考にできる
  4. ネットワークオーディオ革命・ハイレゾ革命こそあったものの、オーディオ技術はそこまで急速に進化しませんので、対応コーデックに不満がなく、新製品との価格差がある状況では過去製品が有利になります。SC-PMX100は一時期40,000を切っていたのですが、記事作成時点で在庫が切れて価格が元に戻ったようなので、リストから外しました。
  5. せっかく、プロ・セミプロが揃っていて過去製品も含めるのだから、セパレート構成も評価対象に加えるべきとのことで、ピュアよりの構成も含めました。当初は3万円程度を基準にしていたゆるい企画でしたが、ガチ臭がすごくなりました。

 ベンチマーク

  • (約12万)M-CR611(Marantz)2015(黒2017)+B&W686S2(B&W)2014
  • (約10万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+Diamond220(Wharfedale)2015
  • (約8万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ZENSOR1(DALI)2011
  • (約7.5万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ SPEKTOR1(DALI)2017

4万円~7万円

  • (約6.5万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ SC-M41(DENON)2017
  • (約6万)SC-PMX150(Panasonic)2017
  • (約5万)EX-NW1(JVC)2017
  • (約5万)EX-S55(JVC)2017
  • (約4.5万)K-515(KENWOOD)2017
  • (約4万)RCD-M41 + SC-M41(DENON)2017
  • (約7万)CAS-1(SONY)2015
  • (約5万)CR-N765+D-112EXT(ONKYO)2014

~4万円

  • (約3万)SC-PMX80(Panasonic)2017
  • (約3万)SMC-300BT(SANSUI)2017
  • (約3万)X-NFR7TX(ONKYO)2016
  • (約4万)HR-X101(TEAC)2016
  • (約3万)X-HM76(PIONEER)2016
  • (約2万)K-505(KENWOOD)2015

結論

ベンチマーク

オーディオはあるレベルを超えてくると、好みの要素が大きくなります(人によっていい音の定義が違う)。ベンチマーク構成では、できるだけ癖のない中音域重視のオールラウンド構成を採用しています。SPEKTOR1は現在主流の高解像度重視です。

  • 32(約12万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+B&W686S2(B&W)2014
  • 32(約10万)M-CR611 (Marantz)2015+Diamond220(Wharfedale)2015
  • 29(約8万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ZENSOR1(DALI)2011
  • 30(約7.5万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ SPEKTOR1(DALI)2017

4万円~7万円(*はデスクトップオーディオ)

将来ピュアを考えている人はM-CR611+ SC-M41(だけど、1万円追加してSPEKTOR1に行ってほしい)、将来ピュアオーディオに行くつもりはない&音質と機能性が欲しいという人はSC-PMX150、音質とコスパを追求したいという人にはRCD-M41 + SC-M41が、機能性とコスパを追求したい人にはCR-N765+D-112EXTの構成がそれぞれオススメです。

  • 27(約6.5万)M-CR611 (Marantz)2015(黒2017)+ SC-M41(DENON)2017
  • 29(約6万)SC-PMX150(Panasonic)2017
  • 23*(約5万)EX-NW1(JVC)2017
  • 25(約5万)EX-S55(JVC)2017
  • 26(約4.5万)K-515(KENWOOD)2017
  • 28(約4万)RCD-M41 + SC-M41(DENON)2017
  • 23*(約7万)CAS-1(SONY)2015
  • 27(約5万)CR-N765+D-112EXT(ONKYO)2014

~4万円

コスパ重視なら予算に合わせてSC-PMX80(3万円台)、K-505(2万円台)を(ただし、K-505は品切れに注意。記事を出してすぐにamazonのK-505シルバーは3万円台に高騰してしまいました)。ネットワーク機能がほしいならX-HM76一択でいいと思います。

  • 28(約3万)SC-PMX80(Panasonic)2017
  • 22(約3万)SMC-300BT(SANSUI)2017
  • 25(約3万)X-NFR7TX(ONKYO)2016
  • 24(約4万)HR-X101(TEAC)2016
  • 24(約3万)X-HM76(PIONEER)2016
  • 26(約2万)K-505(KENWOOD)2015

個別レビュー

ベンチマーク

まずはベンチマークです。プレーヤーにはmarantzのM-CR611を据えています。2015年に発売された神機で、ピュアオーディオ初心者が買うべき第一候補です。今年ブラックラインも新たに発売され、今後も安定した人気が期待されます。

当初、公式に提案された構成として、「B&W CM1S2」との組み合わせ、「B&W 686S2」との組み合わせ、「DALI Zensor1」との組み合わせがありましたが、さすがにCM1S2構成は今回の価格帯と開きすぎるので、今回は686S2とZensor1、さらに今年DALIから発売され、圧倒的なコスパで注目されているSPEKTOR1との組み合わせ、中国投資ファンドのIAGの傘下に入ってから勢いのあるWharfedaleのDiamond220をベンチマークで試しました。Zensor1の構成はVGP2018で金賞を取っています。

686S2の対抗でDiamond225も検討しましたが、Wharfedaleの国内知名度を考慮して、今回は686S2を採用しました。この価格帯であればMONITORAUDIOのブロンズラインも候補に入りますが、シルバーと比べると少しコスパが悪いので、不採用になりました。見た目のチープさを許せるのであれば、KEFのQ350もありだと思います。

採点方針ですが、686S2をベンチマーク32点/40点として、各人がつけた点数の平均を算出し、四捨五入しました。参考でDiamond220が32点、ZENSOR1が29点、SPEKTOR1が30点となりました。Diamond220は中音域の充実度を推す人が非常に多く、686S2と同じ総合点を獲得しました。また、個人的にはZENSOR1の味付けの方がDALIらしくて好きでしたが、SPEKTOR1の高解像度を評価する声が多く、音質勝負ではSPEKTOR1に軍配が上がりました。

 

 

 4万円~7万円

M-CR611+SC-M41

ベンチマークでも使用したM-CR611とDENONのSC-M41の構成です。SC-M41はRCD-M41との組み合わせでもう一度出てきます。点数は27点で、中音域と解像度の評価が非常に高い構成でした。1万円違うだけのSPEKTOR1構成と3点も違うということは、SC-M41はダメなスピーカーなのか!と感じる人がいるかもしれませんが、大きな間違いで、非常に優れたスピーカーだと思います。ただそれを上回るくらい、SPEKTOR1の完成度が高かったですね。SC-M41は後述のRCD-M41でもスペック上、十分に鳴らしきれていますが、アンプに余裕があるおかげで音の稠密性が明確に向上しています。高音域はややチグハグ感がありました。

SC-PMX150

 このブログでも絶賛し、バカ売れしたPanasonicニコンポの後継機PMX150がいよいよ発売となりました。USBメモリ対応、DSDにも対応(5.6MHzまで)、下位機のPMX80との差はネットワーク機能とハイレゾリマスター、PMX80はDSD(2.8MHzまで)、スピーカーの材質で、リマスターを除けば音質とは無関係です。

過去機であるPMX100・PMX70との差はハイレゾリマスターとDSD、そしてツイーターの改善による高音の制御能です。高音の評価は元々高かったわけですが、長所をしっかりと伸ばしてきており、高音と解像度に評価が集まりました。点数は29点です。アンプの単体評価ではM-CR611の方が優秀だと思いますが、コンポならでは、カメラとレンズよろしく最適化した構成をぶつけることで高評価を獲得しました(高級コンデジVS一眼+レンズで高級コンデジが勝つみたいなものです。)。コンポを買う魅力と長所を十分に感じられる製品だと思います。残りの課題はややもさい(むさくるしい)デザインですかね。

EX-NW1

本企画の紅一点とでも言うべきか、プレーヤーのない最小構成デスクトップオーディオがJVCのEX-NW1です。さすがにこの出力のアンプを猛獣の中に放り込むのは可愛そうでしたが、価格.comプロダクトアワード金賞を受賞するなど、非常に評判が良いので参戦してもらいました。アンプ部分は単独でKENWOODがKA-NA7として売っているので、セパレート構成も可能です。点数は23点でした。ウッドコーンならではの非常に美しい伸びやかな中~高音は健在でした。一方、デスクトップなので仕方がないですが、音場の広がりは限定的、解像度の低さや低音の評価は低かったです。これは製品よりも評価側の問題なので、次回以降の課題にしたいと思います(重量級と軽量級の選手を戦わせているようなものなので)。

EX-S55

 以前にレビューしたEX-S5の後継機、EX-S55です。ハイレゾ対応した以外、基本的にはほとんど変化なしです。EX-NW1と同様、ウッドコーンならではの非常に美しい伸びやかな中~高音はいいですが、低音は量感不足、解像度には課題が残ります。本当は上位機のEX-HR9を戦わせるべきなのですが、価格帯がオーバーしていて参戦させられないのが何とも歯がゆいところです。点数は25点でした(ちなみにHR9は27点です)。

K-515

 XK-330で迷走した僕らのKシリーズが帰ってきました。ただ・・・ぶっちゃけた話をすれば2015年にレビューしたK-505とほとんど変わらず、違うところといえば、FLAC再生に対応したことくらいでしょうか。逆に言えば、ハイレゾに関心がなければK-505は超お買い得です。点数は26点と高評価、K-505は生産終了しているでしょうから、買うなら早目がオススメです。

 

RCD-M41+SC-M41

 DENONのRCD-M41+SC-M41構成、WHAT HI*FI御用達で2017もBest Buysに選ばれています。

Best Systems 2017 | What Hi-Fi? Awards 2017

 音はもうとにかく全音域に隙がなく、評価は28点と高評価でした。M-CR611とSC-M41との組み合わせのほうが解像度の評価こそ高かったですが、さすが完璧にチューニングしているだけあって中・高音域の評価はこちらの構成のほうが高かったです。ネットワーク機能がない、M40にあったUSB再生がないなど機能性は潔く削ぎ落とされていますが、USBDAC外付けでハイレゾ再生も可能ですし、機能性はいいから純粋に音楽を楽しみたいという本来のミニコンポ用途を満たす製品としては、非常に満足度が高い製品だと思います。後述のSC-PMX80と点数が同じになっていますが、仕上げの良さ(所有する満足度)や音像定位能力はこちらのほうが上なので、1万円程度の差は充分に納得出来ると思います。

CAS-1

 いち早くデスクトップオーディオ市場を開拓し、シンプルおしゃれなデザインでファン心理をくすぐるいかにもSONYらしい製品。2015年発売ながら、LDACに対応、アップスケーリング機能も装備しており、ライトユーザー層への訴求力はかなりのもの。評価は23点で、EX-NW1よりも小数点分やや高得点。解像度の評価が高く、EX-NW1よりは音場の広がりがある一方で、高音に厳しい評価が目立ちました。

N765+D-112EXT

実はすでに後継機種N775が発売されているのですが、CR-N775+D-112EXTの構成だと8万円と予算オーバーになる一方、旧機種のN765を使うと、わずか5万円で組めてしまうのが魅力の構成。N775はアンプが大幅に強化されているので、N775と比べてしまうとさすがに厳しいですが、ネットワーク対応でDSDにも5.6MHzまで対応しているので、同業他社と比べて見劣りするスペックではありません。

音質はいつものONKYO、やや解像度重視で明瞭ないい音を志向しています。評価は27点で高評価ながら、DENONに一歩及ばず。しかし機能性では圧倒的に勝っているお得な構成だと思います。

  ~4万円

SC-PMX80

 以前絶賛したPMX70の後継機、PMX150の下位機種に当たります。カタログスペック上の違いはハイレゾリマスターとウーハーだけだと思いますが、中音域の評価が低めになっており(スーパーツイーターの違いが影響しているかも?)、合計で28点となりました。PMX150には僅差で及ばなかったものの、上位陣の大半に競っており、今年もコスパの高さを存分に見せつけてくれました。

SMC-300BT

 オールドファンにはお馴染み、SANSUIがまさかのコンポを発表したときはざわつきましたね。真空管アンプで実勢3万円は破格だと思いますし、和紙スピーカーも独自性があって面白いです。真空管アンプは鳴り方自体は正統派で、高音はちょっと頑張らないといけないんですが、スピーカーのチューニングで上手く補完できているように思いました。点数は22点となりました。画一的な評価軸ではやや厳しい評価になりましたが、刺さる人には刺さる音なので、一度試聴してほしいと思います。

X-NFR7X

去年レビューしたバランスの良い優等生くんです。採点結果は25点でした。やや量感不足ですが、バランス良く点を取っていました。

HR-X101-SC

 去年レビューした時は6万円台でしたが、一時は4万円を下回る水準まで実勢価格が落ち、ようやく価格競争力のある製品になってきました。採点結果は24点とまずまずの結果になりました。

X-HM76

 去年レビューした時は4万円台でしたが、とうとう3万円台に。採点結果は24点で、低音の量感不足を指摘する声が多かった一方で、解像度の評価は高かったです。それにしてもネットワーク機能付きでこの音質・値段はバーゲンセールでは?

スペック

  • M-CR611共通, 60W+60W
  • (約12万)B&W686S2(B&W), バスレフ, 130mmコーン型ミットレンジ(スコーカー)+25mmツイーター
  • (約10万)Diamond220(Wharfedale), バスレフ, 130mmコーン型ウーファー+25mmツイーター
  • (約8万)ZENSOR1(DALI), バスレフ, 135mmミッドレンジ+25mmツイーター
  • (約7.5万)SPEKTOR1(DALI), バスレフ, 115mmウーハー+21mmツイーター
  • (約6.5万)M-CR611 (Marantz)+SC-M41(DENON), 60W+60W, 120mmウーハー+25mmツイーター
  • (約6万)SC-PMX150(Panasonic), 60W+60W, 140mmウーハー+19mmツイーター+12mmスーパーツイーター
  • (約5万)EX-NW1(JVC), 10W+10W, 密閉, 30mm+40mmパッシブラジエータ
  • (約5万)EX-S55(JVC), 25W+25W, バスレフ, 85mmフルレンジ
  • (約4.5万)K-515(KENWOOD), 25W+25W, 110mmウーハー+25mmツイーター
  • (約4万)RCD-M41 + SC-M41(DENON), 30W+30W, 120mmウーハー+25mmツイーター
  • (約7万)CAS-1(SONY), 24W+24W, 62mmウーハー+14mmツイーター
  • (約5万)CR-N765+D-112EXT(ONKYO), 22W+22W,  100mmウーハー+30mmツイーター
  • (約3万)SC-PMX80(Panasonic), 60W+60W, 140mmウーハー+19mmツイーター+15mmスーパーツイーター
  • (約3万)SMC-300BT(SANSUI), 30W+30W, 110mmウーハー+38mmツイーター
  • (約3万)X-NFR7TX(ONKYO), 26W+26W, 130mmウーハー+30mmツイーター
  • (約4万)HR-X101(TEAC), 26W+26W, 70mmウーハー+20mmツイーター
  • (約3万)X-HM76(PIONEER), 50E+50W, 120mmウーハー+25mmツイーター
  • (約2万)K-505(KENWOOD), 25W+25W, バスレフ, 110mmコーン型ウーファー+25mmツイーター

最後に

 この時期の忘年会を兼ねたミニコンポ試聴会が完全に定着しつつあることに喜びと恐怖を感じました。そろそろAVアンプの記事も更新してくれない?と数人から言われたので、なんとかしたいと思います。少し早い新年の決意表明でした。それでは良いお年を。

2017年のオーディオ雑談、今年聞いてよかったもの

はじめに

年の瀬が迫ってまいりましたので、今年も時代錯誤イベント:ニコンポ試聴会の季節がやってきました。今年は10月中旬からメンバーの募集と会場の調整を始めたかいあって、なんと総勢22名で執り行うことができました。

networkaudiolab.hatenablog.com

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photo credit: wuestenigel Lampions in Hoi An, Vietnam via photopin (license)

 

さてさて、今年のオーディオ界は、ピュア界の既定路線がハイレゾでほぼ落ち着いた一方、一般オーディオ界(下界!?)ではより利便性が重視されるようになり、ワイヤレス(BluetoothスピーカーやEARIN以後の完全ワイヤレスヘッドフォンを含)・ノイズキャンセルの組み合わせが定着しつつあるような状況です。この背景には、高音質コーデックであるaptXから進化し、さらなる高音質伝送(最大48kHz/24bit、既存は16bit)が可能になったaptX HDやSONYのLDAC、モバイル環境の音ズレに対応したaptX LL(Low Latency)といった技術面の進化も無視できないように思われます。このあたり、4年前の記事の頃(AACとaptXを最新の潮流として紹介)と比べると、隔世の感があります(aptXはイギリスのAPTが開発したものですが、2010年にCSRがAPTを買収、さらに2015年にクアルコムCSRを買収するなど、こちらもなかなかダイナミックな変遷)。なお、アップルユーザーに愛されているAAC、原音再現性ではaptXに一歩及んでいなかったわけですが、この数年でこの差は大きくなったように思います。

networkaudiolab.hatenablog.com

マニアックな話が読みたければ、2016/12のこちらの記事もオススメです。

「LDACは最大990kbps(96/48kHz)で伝送される音質優先モードのとき、電波の状態次第では再生がシビアになることもあるが、最大576kbpsのaptX HDは比較的余裕があるため再生が途切れにくい。」ってのは面白いですね。

av.watch.impress.co.jp

ワイヤレスイヤホン

今年出たワイヤレスイヤホンの中で一番印象的だったのがBE Free8、あのNuForceが完全ワイヤレスを出したのは驚きでしたね。僕がNuForce/NuPrimeファンであることを差し引いても音質はさすがで、VGPの金賞も受賞していました。aptX-LL対応です。耳が小さい人やホワイトノイズが気になる人、遮音性を高めたい人はコンプライのイヤホンチップを使ったほうがいいです。イヤホンチップの重要性は、完全ワイヤレス時代にますます高まっていくと思います。デフォルトチップも進化しそうです。

 
 

スマートスピーカー

また、2017年のトレンドとして、amazongoogle、LINEから発売しているスマートスピーカーは触れておかないといけないでしょう。音質的には正直なところカス以外の何物でも無いわけですが、名前が「スピーカー」であり、スマホやPCの音楽を手軽に聞けることから、今後ホームオーディオの中心を担っている可能性が非常に高いように思います。

 

2018年のビッグトレンドとして、amazongoogleが開発した機械学習チップ(AIと呼ぶのはちょっとね)+高級オーディオメーカーの組み合わせは数多く登場してくるように思われます(UEのMegablastとか)。今年バカ売れしたBose SoundLink Revolveなんて見た目もスマートスピーカーですしね(なお、BoseのワイヤレスはaptX未対応(というか非公表)です。ピュア屋はやっぱりBoseが嫌いw)。キーワードはインテリア性の高い無指向性、ワイヤレス、スマート化の3つになると思います。

 

ワイヤレススピーカー 

高級オーディオメーカーのワイヤレススピーカーってのは既に一大トレンドで、古いピュアファンからすると、ブランド安売り!?などと危惧していたのですが、蓋を開けてみればコーデックの進化もあってか、想像以上にしっかり作り込まれており、さすがだなぁと感心させられることが多かったです。

先鞭をつけたのはなんといってもB&Oですね。原音再現性の高さとシンプルな北欧デザインはオーディオとインテリアを両立させたい層にドハマリしました。

 
 

 しかし、何分お高い!のでnot富裕層でオーディオヲタでもないインテリア好きは買えない。そこで都内インテリアショップが目をつけたのがUEです。UEは元来定評のある音響メーカーでしたが、2008年にロジクールに買収された後は、定評のある音質に加えてコスパも優秀という、手がつけられないブランドへと進化しました。UE ROLL2はスポーティでありながら落ち着いたモダンデザイン、B&Oの半額以下にも関わらず、同程度もしくはそれ以上の高解像度を誇っており、初めてインテリアショップで聞いたときはびっくりしました(もっと音質悪くてええんやでって思いました)。まぁ、耳が超えるのはいいことですが。

 
 

 あまりにこの子達がバカ売れしたせいなのかなんなのか、老舗のCambridge Audioと色気のある音を奏でることでファンの多いDALI、さらにAUDIOPROが参入してきたのは驚きでした。 ざっくりとした感想を書いておくと、B&OとCAは中音域重視でやや軽め、UEは高解像度、DALIは音の連続性、APは好きな人にはドハマリするであろう個性的なルックスと低音域が特長です。僕の寝室ではYOYO(S)が現役で頑張ってくれています。

 
 
 
 

 明らかにB&OのA2を意識したデザイン。

 

 AUDIOPROのAddOn

 
 

 ノットピュアオーディオメーカーも負けじと参入、今年は本当にホットなワイヤレススピーカー市場でしたねぇ。イギリスのアンプメーカーMARSHALLにギターとアンプで有名なFenderピュアオーディオ屋なので普段はあまり馴染みがないメーカーでしたが、Marshallは高音重視で面白い設定、Fenderは中音域重視で見た目に反して優等生な設定でした。デザインもロック好きな人など刺さる人には刺さるんでしょうね。

 
 

 アンプ・DAC

 今年、アンプはこれといって出物がありませんでしたね。色々と試聴しましたが、結局何も買いませんでした。DACコスパ考慮すると現在はOPPOSONICA DAC一択でしょう。色々な所でコスパ最強としてレビューされているので、改めて紹介するまでもない銘器です。ミニコンポ試聴会の参加者は文字通り全員が所有していました(改めて全員ってさすがにすごいなぁ)。仮に万が一に音が気に入らなかったとしても、リファレンス機として買わざるを得ないんですよね笑。7月くらいまでは品薄状態が続いていましたが、最近は品薄も解消されたので、まだ買ってない人はすぐにポチっておきましょう。

追記:OPPOのAV事業撤退もあり、販売終了しました。(2018/3)

 

スピーカー

DALIの新しい廉価スピーカーシリーズ、SPEKTORは評価高かったですね。周りに結構買っている人が多かったです。僕自身の感想としては、確かに価格比ではいい音を鳴らしているけど、少し物足りないなーというものでした。ピュアオーディオのメインシステムとしては若干物足りなかったですが、シアター構成にすると化ける気がするので、全シリーズ入荷したら、改めて試聴してみたいなと思っています。初心者の導入にはとてもいいスピーカーだと思いました。

 モニターオーディオ(モニオ)の看板モデルのシルバーラインも刷新されましたね。100と200を聞きましたが、相変わらずモニオらしいしっかりとした高音質でした(無個性だけど僕は好きです)。200のサイズ感はなかなか素晴らしくて、トールボーイ諦めていた人にはハマるかもしれません。あと100のナチュラルオークのカラーリングはめっちゃ綺麗だったので、北欧インテリア好きには刺さると思います。
 
 

www.phileweb.com

 最後に

ずっと危惧していることではあるのだけど、ホームオーディオ環境の変化は著しいですね。ミニコンポ試聴会はいつまで続くことやら、笑。