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ネットワークオーディオラボ ぶろぐ

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ボーナスで買うべきハイコンポ2018

はじめに

今回はピュアオーディオ未満、 ミニコンポ以上をハイコンポとして定義したうえで、ハイコンポについてまとめました。タイトル通り、「ボーナスで音響機器を揃えたいので、適当に見繕ってくれ」と知り合いに頼まれたことから始まった企画です。予算はMAX20万円までとのこと。

ニコンポ企画でも実感していることですし、ネットオーディオの記事にも

かつてハイコンポはCDのプレーヤーとプリメインアンプとスピーカーの三位一体であったが、このころ構成に変化が生じている。これはネットオーディオの進化によるところが大きい。

 と書かれているように、機器の構成はドラスティックに変化しているので、標準的なコンポだけでなく、ピュアオーディオライクなディスクリート構成(プレーヤーとアンプ、スピーカーを別々に選んで組み合わせる)も候補に入れています。

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たたき台にしたのは、家電批評201808の記事『ピュアオーディオ超入門』です。

試聴

視聴環境は友達(上記とは別の知り合いですが)の家のリスニングルームを利用させていただきました(最近新調したので自慢したかったそうです笑)。都心では無理なスペック、羨ましい(^q^)

アンダー10万円

たたき台は、家電批評で推奨されていた組み合わせ:TOPAZ CD10+PM5005+SPEKTOR2

 

 CD再生に特化するなら、TOPAZ CD10は非常に満足度が高いプレーヤーですが、Amazonレビューにもあるように、非常に初期不良が多いので注意。前述したように、最近は再生する音源が多様化しているので、CD以外にもストリーミングなど色々と再生してみたい初心者にはやや不向きな提案です(再生できないことはないですが手間ですし、音質が落ちます)。また、かりにCDの再生だけをしたいのであったとして、素直に同じMarantzのCD-5005と組み合わせたほうがデザインの統一感があるように思います。解像度はややTOPAZ CD10が上ですが、音の総合力でもこちらのほうが収まりがいいです。

解像度を追求したいなら、DENONの755REも定評があるので試聴推奨です。プレーヤー単独の能力では、このクラスで一番優秀だと思います。

プリメインアンプはこの価格帯だと鉄板のPM5005で不満がありません。対抗馬はDENONのPMA-390REになるでしょうか。解像度ではPM5005がかなり上、DENONのほうが量感はありますが、その分音もやや粗いので、よほどのことがない限り、PM5005でよいと思います。

ついでにSONYのSTR-DH190も試聴してみました。U2万円にしてはしっかりとした音を出しているように思いますが、やや中途半端感があるといった印象でした。

さて、単独ではDENONのプレーヤーとMARANTZのアンプが優秀でしたが、強い者同士を組み合わせても必ずしも音質がよくならないところが、音響機器の面白いところです。結論から言えば、今回の組み合わせではDENON/MARANTZよりもDENON/DENONの組み合わせのほうが満足度は高かったです。ハイコンポの優位性である

総合的な設計を施せる・・・相互的なバランスをとることによっても音質を向上させることができる。

が実感できるいい事例だと思うので、こちらも比較試聴推奨です。

  • DCD755RE+PMA390RE(DENON/DENON
  • DCD755RE+PM5005(DENON/MARANTZ)
  • CD5005+PM5005(MARANTZ/MARANTZ)

しかし、初心者向けならそもそもディスクリート構成にしなくてもええじゃないか、ということで、いつものM-CR611。エントリークラスの独立アンプと比べて、ほとんど遜色ない音が、面倒くさい配線無しで手に入り、様々な音源を再生できる能力もあるので、CD再生によほどのこだわりがあるのでもない限り、まずこれを選んでおけば間違いないように思います。

DALIのSPEKTOR2はこのブログでも何度も取り上げている超ハイコスパなスピーカーのシリーズ。SPEKTOR1との違いは、2のほうが一回り大きく、特に低音の量感が一回り大きい点。高音や解像度はほとんど変わらないので、許容できるサイズに合わせて好きな方をセレクトすればよいと思われます。

TOPAZ CD10の高解像度を徹底的に強調したいなら、スピーカー比較試聴(7選)で試聴したONKYO D-112NFXも面白い選択肢です。

また量感はいらない・コンパクトなシステムを組みたい、ということであれば、Q Acoustics 2000iも有力候補です。

 検討した結果
  • M-CR611+SPEKTOR1/SPEKTOR2(お手軽でオススメ)
  • DCD755RE+PMA390RE+SPEKTOR1/SPEKTOR2(音質重視)
  • DCD755RE+PM5005+D-112NFX(解像度追求)
  • TOPAZ CD10+PM5005+SPEKTOR1/SPEKTOR2(家電批評の推奨構成)

 アンダー20万円

たたき台は、家電批評で推奨されていた組み合わせ:CD6006+ZENSOR5AX。先程のプレイヤー+アンプ+スピーカーの構成ではなく、プレイヤー+アクティブスピーカー(アンプ内蔵型、パワードスピーカーとも)の提案

この形のダリのアクティブスピーカー聞くのは何気に初めてでしたが、十分な音質でしたね。先述した「総合的な設計」といった場合、プレーヤーとアンプの相性よりも、アンプとスピーカーの相性のほうが、音質に与える影響は圧倒的に大きいです。したがって、配線的にも音質的にも、アクティブスピーカーというのは合理的な選択肢です(相性を考慮したディスクリートには敵いませんが)。

アクティブにするかどうかはさておき、アンダー20万円くらいまでは、スピーカーに集中投資することをおすすめします。SPEKTORに追加投資して音質の向上を実感したければ、第一候補は以下の記事でも試聴に使ったKEFのQ350です。SPEKTORより高い解像度を実感することができます。

networkaudiolab.hatenablog.com 

 よりキラキラ感を重視したければB&Wの686S2も鉄板の選択肢です。Amazonにはないようですが、Monitor AudioのSilver100/200あたりも比較試聴しておくと、自分の好みがわかると思います。

プレイヤーとアンプは先程のお手軽なM-CR611やDENONセットで大丈夫だと思いますが、グレードアップしたければ、Marantzのミドルクラスセットがいいと思います。しっかりと音質の向上を実感できる組み合わせです。このクラスからはハイコンポと言うのがさすがに憚(はばか)られるので、ピュアオーディオとの境界線になるように思います。

 検討した結果
  • M-CR611+Q350(お手軽でオススメ)
  • M-CR611+686S2(お手軽でオススメ・キラキラ感)
  • CD6006+PM6006+Q350/686S2(音質重視)
  • CD6006+ZENSOR5AX(家電批評の推奨構成)

さいごに

僕の友達はM-CR611+Q350にしたそうです。プレーヤーをPCにするPCオーディオであれば、プレーヤーに投資していたお金をスピーカーとアンプに投資できるので、もう少しリッチな構成も可能です。以前に書いたPCオーディオの記事もいつの間にか4年前なので、そろそろアップデートしようかしらと思いました。ではでは。

スピーカー比較試聴(7選)

はじめに

AV REVIEW 201804/05の「特選スピーカーサウンドガイド」が面白かったです。記事のメインは25~50万円のミドルハイクラススピーカーの紹介でしたが、比較的安価なブックシェルフスピーカーも紹介されていたので、こちらでもスピーカーを加えて試聴してみました。試聴環境は、お手軽にPC出力+IDA-8、対象は20万円以下と5万円以下の2項目です。

20万円以下

KRIPTON KX-0.5

 ベストバイにあがっていたのは、やはりクリプトンのKX-0.5。当ブログが普段取り扱っているスピーカーはせいぜい10万円程度までなので、スピーカー単体で2倍近い値段となるとやや心臓に悪いですが、それだけの価値はあると断言できるスピーカーに仕上がっています。そもそもクリプトンは25~の価格帯の製品が主力なので、クリプトン的には安価なラインになるのが闇深い笑。

何度か繰り返していますが、このサイズのスピーカーは量感を稼ぐためにバスレフ型にすることが一般的で、密閉型を採用する場合は量感をやや犠牲にして解像度を重視する作りになります。その典型がELACというメーカーですが、その牙城に挑んでいるメーカーのひとつがこちらのクリプトン、このサイズでも密閉型のポリシーを貫いています。

密閉型はバスレフと比べ、中低域が精密で微細な描写が可能だが、ユニットの描写能力の高さが、密閉型なのでよくわかる。

対抗馬は当然、ELACのBS263ということになるでしょう。BS263のサイズ:H285×W192×D285mmに対し、KX0.5はH352×W194×D319mmとサイズも同じようなもので、同じ密閉型、価格も同等です。

聴き比べた感想ですが、高音域はELAC、中・低音域は同等だが、緻密さで一歩ELACが上となった程度で、ほぼ互角の戦いになりました。今回はオーディオルームでしっかりとした環境作りをしているので、ELACのポテンシャルが十分に発揮されましたが、ELACは色々と繊細なので、一般的な環境下であれば、鳴らしやすいクリプトンのほうがいい音を出す可能性も低くはないと思います。ELACと真っ向から殴りあえる好敵手の台頭は素直に喜ばしいです。

ちなみに、復活したTechnicsのSB-C700も同一価格帯、同一サイズ336× 220 × 286 mmのスピーカーです(さすがにバスレフ型ですが)。音自体は上記の二台に比べるとあと一歩という印象で、量感はそれなりでしたが、解像度は明らかに物足りないように思いました。密閉型の締まりのある低音を聞いてしまうと、どうしても粗が目立つんですよね。聞き疲れしないいい音で、音像定位はしっかりしていたので、BGMを流すにはいいですが、そのためだけにこの値段はちょっと・・・。

 

HiVi BESTBUY 2017 WINTER

【徹底研究2018冬】クリプトンの小型スピーカー「KX-0.5」を徹底的に聴く。冬のベストバイ選出が納得の肉感的な鳴り | Stereo Sound ONLINE

ASCII.jp:伝統と今が同居した、クールなサウンド「KX-0.5」を聴く (1/3)

クリプトンの密閉型スピーカー「KX-0.5」は、エントリーモデルとは思えない空間表現力だ。音楽に深く集中できるのが魅力 | Stereo Sound ONLINE

クリプトン、シリーズ最小の密閉型スピーカー「KX-0.5」 ー 18.5万円/ペア - PHILE WEB

クリプトン、ペアで20万円を切る小型密閉スピーカー「KX-0.5(Point Five)」 - AV Watch

 

jp.technics.com

5万円以下

ECLIPSE TD307MK2A

タイムドメイン理論に基づく正確無比な音像定位能力に定評のあるECLIPSE、量感は皆無で解像度も高いわけではありませんが、直感的に「いい音」と感じさせる仕様になっています(最近人気の無指向性スピーカーも同じベクトルの製品です)。ペアで5万円以下なので、価格的な安心感もあります。

 ONKYO D-112NFX

 評判の良かったD-412EXを一回り小さく小ぶりにした印象、ハイレゾ音源もしっかり正確に鳴らしており、低音も及第点と相変わらずの優等生です。没個性的ですが空きがないつくりで、コストパフォーマンスの高さが光ります。

 DALI SPEKTOR1

本誌では紹介されていませんでしたが、この価格帯では紹介させざるを得ないでしょう。去年の年末以降、圧倒的なスピードでDALIの代表モデルに登り詰めたSPEKTOR1です。ONKYO D-112NFXと聴き比べると、「スピーカーの音の個性」とは何かがよく分かるので勉強になります。伝統的なDALIの優雅さはそれなりですが、最新のキレキレサウンドを奏でてくれます。

 JVC SX-WD9VNT

ONKYOの没個性とは対象的に、ウッドコーンの個性を全面に押し出したスピーカー。ウッドコーンはどうしてもボヤッとした音に感じてしまっていましたが、SX-WD9VNTはかなり音のクリアネスが高く、想像以上に満足度が高かったです。あー、こういう音を目指していたのね、と納得できるスピーカー。低音に対する独特のアプローチも興味深く、「音の旨味」という表現にも納得です。

【レビュー】JVCの“人工熟成”ウッドコーンスピーカー「SX-WD9VNT/WD7VNT」を聴く - PHILE WEB

2018年上半期オーディオ

はじめに

光陰矢の如しとはよく言ったもので、2018年も気づけばそろそろ折り返し地点ということで、Net Audioのライターズセレクションに触発されて、試聴メモを残しておくことにしました。

 marantz ND8006

ニコンポ記事でも再三触れているとおり、近年の音楽メディアはCDなどの物理メディアから音楽ファイル、特にハイレゾ音源への移行が急速に進んでおり、プレーヤー側も流れに即して急速にCDレスの方向に進んでいます。その典型がネットワークオーディオプレーヤーと呼ばれる商品群で、NASに代表されるサーバー内のファイルを再生する機能に特化しているものや、PC内のファイルを再生する際のDACを兼任するもの(USB-DAC)などが普及しました。その代表格がmarantzのNA-8005です。

これに対して、歴戦のオーディオラバーは、そうは言ってもCD・SACDコレクションを再生したいという希望があるわけで、こうした商品群をCDトランスポート(CDプレーヤー)といいますが、この代表格がmarantzのSA8005でした。

 

さてさて、ここでお気づきのようにどちらも再生しようと思ったら、わざわざ二台買って、さらにそれを重ねておかないといけないということで、

  • 費用
  • 物理スペース
  • 配線

 など、様々な問題が生じてしまいます。だったら、まとめて一台にすればいいじゃん、ということで発売されたのがND8006です(ただしSACDの再生機能はカット)。しかも価格は1台分(実勢価格でも2台買うよりは安い)だけでなく、チップはESS製のES9016K2Mを新たに搭載、操作アプリもHEOSに統合して取り回しがよくなるなど、非常に完成度が高い統合デジタルプレーヤーになっていました。

SACDに対応しないのは、あくまで“このクラス”に限定した場合、SACDに関心を持つ層が少なく、数万円のコスト増をユーザーに強いるよりは、価格を抑えたほうがユーザーメリットがあるという判断からだそうだ。

 marantzとESSの組み合わせは初ということで、どんな音になっているか注目でしたが、蓋を開けてみるとしっかりとESSの潜在能力を引き出せており、不満のない出来映えになっていると思います(USB-DAC)。また、アマゾンミュージックのストリーミング再生もお手軽でした(ぶっちゃけストリーミングだとGoogle Play Musicを使いたいのですが・・・)。

marantzがND8006を発売した背景には、ミニコンポ企画でも紹介したM-CR611の大ヒットが確実にあると思います(あくまでも予想だけど)。こちらはND8006にアンプも乗っかっていて、初心者にお手軽なオールイン製品、スピーカーに繋ぐだけで幸せになれます。一見するとこちらのほうがいい気もしますが、オーディオは基本的に「分けられるものは分けたほうが高音質」というのが鉄則なので、音質的にはやや不利になることは覚えておきましょう。

 

実際のところ、音質を左右するのはスピーカーとアンプなので、プレーヤーは多機能・操作性重視・デザインで選べばいいというのが個人的な意見。こうした評価軸とND8006は非常に相性がいいと思います。

  • オーディオ中級者以上で、ディスクリート構成を試したい(プレーヤーとアンプの組み合わせを追求したい)
  • とくに、M-CR611のユーザーで、より音質の高みを目指したい
  • オーディオ初心者だが、資金に余裕があるので、初めからよりよいシステムを組みたい

人達にはオススメの製品だと思いました。

 

マランツ「ND8006」レビュー。CDからハイレゾまでを忠実再現する新世代Hi-Fiプレーヤー (1/3) - PHILE WEB

ASCII.jp:これさえあれば? CDからハイレゾまで全対応の新プレーヤーほか──マランツ (1/4)

 HPL2 Processor Plugin

僕は音楽を聞く時はスピーカーを使うことが多い。理由としては

  • 音質的に有利
  • ムレ感や締めつけ感が苦手

程度問題こそあれ、ここはヘッドホンやイヤホンの欠点である。しかし、スピーカーを使えない環境で音楽を楽しみたいというニーズがあるのは間違いない。ここで問題となるのが、

多くの楽曲が、スピーカーで鳴らすことを前提に制作されているのも事実で、ヘッドフォンで聴くと制作者の意図通りの音ではない可能性もある。

という点だ。そこで、アコースティックフィールドという会社が

本来スピーカーで鳴らす意図でミックス・マスタリングされた音源をヘッドフォンで聴いても自然に聴こえるようにエンコード

し直す技術を開発した。これがHPL2と呼ばれるもので、以前からヘッドフォン祭参加者の間では知られていた技術だが、これを『無料で公開』したのが、HPL2 Processor Pluginである。

"なぜHPLで聴く音楽は気持ちいいのか?"

それは、音楽音源がスピーカーで気持ちよく聴けるように作られているからです。
HPLは、そのミックスバランスを崩さずにヘッドフォンやイヤホンで実現します。
何かを加えて気持ち良くするエフェクターではありません。
もともと気持ちの良い音をヘッドフォンやイヤホンでも正しく再生する、それだけを目指した変換技術です。​(詳細は本サイトの"ABOUT"をご参照ください)

細かい技術的な部分についてはav.watchの記事がよくまとまっているので参照されたし。ヘッドフォンラバーの諸氏で、まだ試していない人はすぐにお試しあれ。導入はやや面倒くさいが、記事でも触れられているように、フリーソフトのMusicBeeを使えば、完全無料でHPL2を試すことができる。

個人的な感想としては、やや音源のクリアネスが低下し、少し音が遠くなる代わりに、照準がしっかりと定まった音になるという印象を受けた。音像定位がよくなると言ってしまえばそれまでだが、立体音響の体験というのは独特で、好きかどうかにかかわらず一度は体感して欲しい。

 Deezer HiFi

音楽マニア垂涎のロスレス聴き放題サービス、月額1960円。Apple MusicやSpotifyのような圧縮音源聴き放題サービスとは異なり、CDクオリティの聴き放題サービスは国内では初(海外ではすでにTIDAL、Qobuzなどが先行しているが)。普及するまでは1ヶ月間の無料トライアルが利用可能なのは安心ポイント。

普段からハイレゾ音源を聞き慣れている人間からすると、音質に新たな感動こそないが、これが聴き放題でストリーミング再生なのかと妙に感心してしまう。

ある意味、ハイレゾ初心者にオススメのサービスかもしれないが、まともなオーディオ環境なしでハイレゾ音源を再生しても、あまり違いがわからないというジレンマ。ハイレゾ対応器を所有しているが、YoutubeApple Musicでしか音楽を聞いたことがない!なんて人がいればオススメ。

www.deezer.com

 

 

DACとは何か

はじめに

DACって何なの?」

PCオーディオ草創期に、色々な人から聞かれたのを思い出します。この質問を受けて書いた記事が以下のものですが、気づけば4年前なのか・・・。ちなみにこの質問をしてきた人の中には、オールドオーディオラバーの人も含まれていました。DAC自体はCDプレーヤーの中に組み込まれていたのですが、今ほど意識はされていなかったのかもしれません。

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 去年10月のNet Audioの特集「DACとは何か?」を見て、そんなことを思い返しました。ということで、記事を参照しながら久し振りにDACの話をしたり、最新トレンドを追ってみましょう。

DACとは

DACについての説明については、4年前の僕の過去記事を参照するのが今でも一番分かりやすいと自負しています。ポイントとして、

  • DACとはデジタル・アナログ・コンバーターの略で、デジタルデータをアナログ信号に変換する機械
  • DACがないと、PCでデジタル⇒アナログ変換を行うことになるが、PCはノイズだらけなので、「デジタル⇒アナログ信号+ノイズ」になってしまう。
  • そこでPCでは変換を行わずにDACで変換することで、ノイズを避けよう!

というものでした。

Net Audioの記事ではDACの重要性を強調しています。

  • DACとは、デジタルファイル再生にあたって最も重要なハードウェア的基盤である。
  • DACを知らずしてデジタルファイル再生は語れない

歴史

DACを飛躍的に進化させたのはなんと言っても⊿Σ(デルタシグマ)変調です。

  • 80年代末から90年代にかけて普及した1bit型DACが採用する⊿Σ変調である。
  • 大きなメリットの一つが可聴帯域内での量子化ノイズを可聴帯域外となる超高域へ追いやるノイズシェーピングだ。
  • 2000年代に入るとその技術もより洗練され、設計のしやすさや量産効果を含めたコストの点でも1bit型DACが優勢となっていく。

近年、オーディオマニアの間ではDSD音源が普及しています。僕も当初は懐疑的でしたが、2015年の中ごろにハマってしまい、こんなことを言っています。

ソフト面で去年一番投資したのが実はこのDSDで、「あんなもの流行らないね」みたいなことをずっと言ってたんですが、DSD信者から容量の(相対的な)小ささと音のクリアネスに関する長い長い洗脳を受け(笑)、気づいたらDSD音源買い漁ってたんですよね。

それなりに普及したこともあり、DSDって結局何なの?みたいな質問は結構あって、これはどのように音源が記録されているかの違いとして説明できます。まず、音声データのMP3、これは圧縮音源です。これに対して、CDやハイレゾでお馴染みのFLACなんかはリニア(非圧縮)PCM変調で記録されている非圧縮音源になります。非圧縮なので、当然ですが音質の劣化がないのが一番の魅力です。DSDもこの非圧縮音源の仲間なので、当然音質がいいわけですが、

  • PCMデータに関してはインターポレーション(内挿)フィルターを用いてサンプルデータの補間を行ってから⊿Σ変調を行うが、DSDデータではこの処理が不要であり、よりシンプルな回路を実現できるのが優位点だ。

という違いがあります。基本的にオーディオはシンプルであればあるほどよいことが多いので、無駄な内挿プロセスがないだけ、DSDは音質的に(サイズ的にも)有利になります。

メーカー

このブログでもたびたび扱っているDACチップのメーカーについて。オーディオマニアの間で定評があるのはテキサス・インスツルメンツ(TI)のバーブラウン(PCM**)とESS(ES**)、ここに日本の旭化成(AK**)やウォルフソン、シーラスロジックなどが食い込んできます。

こうした汎用チップに加えて、超高級機ではFPGAを用いたDAC回路も見られます。FPGAは簡単に言えばオーダーメイドの回路のことで、近年は金融の高頻度取引(HFT)やディープラーニング等の科学技術計算でも使われることの多いものです。DACチップはアナログ音源の味付けを変えるので、好みの音を追求するには、回路をいじるのが一番いいわけです。

バルク転送

現在マニアが注目しているバルク(Bulk Pet)転送方式、これはUSBのデータ転送にかかわる新しい方式のことで、これから普及していく可能性が高いです。

発想としては、Bluetoothの転送方式の話に似ていて、Bluetoothのデフォルト転送方式はスピード重視のSBCだった(そもそも音声を飛ばす目的ではなかった)わけですが、これでは音質の劣化がひどいということでapt-XやAAC、さらにLDACなんかが登場したのは以前書きました。

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同様に、USBについてもデフォルト転送方式はアイソクラナスという応答性重視の方式でした(やはり音声を飛ばす目的ではなく、マウスやキーボードの利用が主目的)。しかし、この方式は転送容量に波を生むため、DACに負担をかけてしまい、音質の劣化に繋がることが指摘されていました。そこでそうした不要な波を生まない連続的な転送方式を行おう、こうした目的で開発されたのがバルク転送です。簡潔に言えば、ガタガタした離散転送方式からなめらかな連続転送方式への移行ということになります。

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試聴

本誌では100万オーバーの最高級DACも試聴されていますが、さすがに一般人には厳しすぎるので、10万円前後の据え置き機に限定しました。パワーアンプはNuPrimeのSTA-9、スピーカーはやや力不足ですが、入手のしやすさと最近の人気を考慮して、今回はKEFのQ350を使いました。音源はFLACDSDです。

 
 

 micro iDSD BL 

2015年の記事で、なんでこの値段でDSD11.2MHzまで対応してるの!って驚いているiDSDの後継機、取り回しのしやすさや扱いやすいサイズも相まって、安定した人気です。チップはバーブラウンDSD1793×2。

  • ニュートラルではあったがややドライな質感であった前モデルに比べ、艶ハリよく質感の滑らかさが加わるとともに、どっしりとした低域の量感や締り感も向上。

とのことですが、個人的に艶ハリは感じられず、一方で全音域についてしっかりした正確な音を出しているように感じました。この辺りはスピーカーの味付け、スピーカーとの相性もあるでしょうが、さすがベストセラーだけあって、堅実ないいDACだと思います。

ちなみに、中級機としてxDSDが4月に発売されました。値段やサイズ、スペックは大ヒットとなったCHORDのMojoを意識しつつ、高級感をアピールしていこうといった戦略のようですね。チップは同じくDSD1793です。micro iDSD BLに比べると量感がやや落ちますが、モバイル用途なら十分だと思います。

 CHORDのMojoのチップはというと、汎用チップは使っておらず、さきほど超高級機で採用されていると紹介したFPGAが使用されているのが大ヒットの理由です。CHORDのフラッグシップ据え置きDACであるDAVEは150万円ほどしますが、こちらは6万円以下。据え置きで使うにはやや難がありますが、音の滑らかさはピカイチで、価格破壊感は相変わらずでした。音を大きくするとややジッターが気になりましたが、そもそもこの2機はモバイルDACなので、気にしなくてよいでしょう。

  • 無限に処理ができるフィルタを使って補完すれば、オリジナルの波形を復元できるというのが我々の考え方です。つまり、補完処理を増やしていけばいいのです。そのためには、フィルタのアルゴリズムを改良し、いかに効率的に処理を重ねていくかを重視しています

ASCII.jp:CHORD『Mojo』は、見た目からは想像できないほど過激なDAC、CEOに聞く

Hugo/Mojo/DAVE、CHORDは何故汎用DACを使わないのか? キーマンがこだわりを解説 - AV Watch

 marantz HD-DAC1

 こちらもmarantzのベストセラーDAC、marantzのフラッグシップはディスクリートDACを誇るSA-10ですが、50万円オーバーで需要がないでしょうから、こちらをセレクト。DACチップはシーラスロジックのCS4398です。2014年発売だけあって、ややスペック的に見劣りしがちですが、余裕があって非常に満足感のある音です。音の解像度は(フラッグシップ級と比べると)控えめで甘いですが、普通の人には十分すぎると思います。

OPPO Sonica DAC 

2017年聞いてよかったものでも紹介した超コスパSonica DAC、まさかのOPPOのAV事業撤退により販売中止になってしまい、プレミアがついてしまいました。ESSの旗艦チップであるES9038PROを搭載したスペックの高さ、10万円を切るコスパの良さは圧巻で、去年のオーディオマニアの話題になったことは記憶に新しいところです。プレミア価格でしか買えなくなったのは残念ですね。

僕はNuPrimeのファンであり、当然にESSのチップのファンでもあるため、圧倒的な解像度の高さを誇る本機の音も大満足でした。不満を言えば、音声再現能力に関してはバーブラウンのチップに一日の長があるかな、というところがあり(もちろんチップだけでは決まらないのであくまでも傾向ですが)、オーケストラに包み込まれたい!みたいなときには、やや物足りなさを感じることがあります。逆に打ち込み音源を聞く時などは、ESS圧勝で、ESSの右に並ぶものはないように感じています(CHORDのFPGA含め)。

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 さいごに

ということで、久し振りにDACの話をしてみました。DACはエンジニアリング的な要素が強いので、技術的な部分に興味があるなら非常に楽しい機構ですね(文系の人は嫌いかもしれませんが)。ちょっとマニアックになりすぎたかもしれませんが、楽しかったです。

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お年玉で買うべきミニミニコンポ2018

はじめに

例年恒例のミニコンポ比較に併せて、延長線でミニミニコンポ比較を開催しました。ミニコンポ比較企画は年々審査員にプロが増えていっており、全体的にピュアオーディオ寄りの構成になっていました。その結果、適切な金額を投資することで、コスパのいい音質を追求するという本来の趣旨とは整合的である一方、どうしてもシステムが高額化してしまう傾向にあり、初心者向け企画としては少し疑問符がともっていました。

そこで、VGPと同様に(2万円~)4万円以下と4万円~7万円の区分で審査するとともに、今年は初心者ライトユーザー層向け企画として、2万円未満ミニミニコンポの比較を追加で行うことにしました。1年間のウケを考慮しながら(お陰さまで通年で訪問頂いている記事なので)来年の方針を決めたいと思います。

ライトユーザー層の場合、音質はあくまでも評価軸の一つに過ぎず、デザインやサイズとの総合評価になるとは思いますが、こだわらなければPCやスマホで音楽が聞ける時代に追加的に支出するわけですから、音質はいいに越したことがないでしょう。なので、2機種で迷ったとき!などに参考にしてもらえると幸いです(もちろんピュアヲタ層でもサイズやデザインは重要ですが、相対的な重要度は音質が圧倒的に上)。

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photo credit: Beegee49 Hello Kitty via photopin (license)

 試聴環境

基本的に環境は本編と同様ですが、ハイレゾの代わりにYoutube音源を試聴しています。ピュアオーディオでは原音再生能力が重要ですが、Youtubeのような劣化音源を利用した場合、原音再生能力が高いとノイズが気になります。したがって、機器の補正能力が重要になってきます。一言で言えば、音楽マニアより映画マニアに近いシステム選びの方がハマるということです。この違いを象徴するブランドとしてBoseが挙げられます。ピュア屋からすると補正が利きすぎていて音が人工的に聞こえるので、Boseはあまり好きになれないわけですが、一般ユーザーからすると、補正の結果、いい音!に聞こえることがあるわけです。

ピュアオーディオのレビューを見ていると、「思ったよりも迫力がなかった、コスパ悪い」といった内容を見かけることがありますが、これも同様の理由です。人口調味料でしっかり味付けされた料理を食べ慣れていると、自然食品を味気なく感じることがあります(※人口調味料が悪いとは言っていません。TPOに応じて使い分けることが大事という趣旨です。質があまり良くない肉は強めに味付けたほうが美味しいし、高級な肉はシンプルな味付けの方が美味しいでしょう)。

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試聴機器

ベンチマークは本編からの刺客、KENWOODのK-505です。量感が若干不足しているものの、全音域に渡って満足度の高い製品。2015年発売で2世代前の製品になるため、非常にコスパが高くなっています。ピュアとは違う評価指標を使っているので、K-505を20点/25と基準化して、各製品の相対評価を行います。

  • (約2万)K-505(KENWOOD)2015

比較するのは以下の選手

  • (約1.2万)X-SMC02(PIONEER)2017
  • (約1.4万)X-CM56(PIONEER)2016
  • (約1.6万)X-U6(ONKYO)2016
  • (約1.6万)SC-HC395(PANASONIC)2016
  • (約1.5万)SC-HC295(PANASONIC)2016
  • (約1.1万)SC-PM250(PANASONIC)2015
  • (約1.7万)CMT-SBT40(SONY)2014

スペック

  • (約2万)K-505(KENWOOD)2015, 25W+25W, バスレフ, 110mmコーン型ウーファー+25mmドーム型ツイーター
  • (約1.2万)X-SMC02(PIONEER), 10W+10W, バスレフ, 80mmコーン型フルレンジ
  • (約1.4万)X-CM56(PIONEER), 15W+15W, バスレフ, 94mmコーン型ウーファー+50mmコーン型ツイーター
  • (約1.6万)X-U6(ONKYO), 15W+15W, バスレフ, 100mmコーン型ウーファー, 20mmバランスドーム型ツイーター
  • (約1.6万)SC-HC395(PANASONIC), 20W+20W, 65mmコーン型フルレンジ, 80mm*2パッシブラジエータ
  • (約1.5万)SC-HC295(PANASONIC), 10W+10W, 80mmコーン型フルレンジ
  • (約1.1万)SC-PM250(PANASONIC), 10W+10W, 100mmコーン型フルレンジ
  • (約1.7万)CMT-SBT40(SONY), 25W+25W, バスレフ, 95mmコーン型ウーファー+57mmドーム型ツイーター

結論

冒頭に書いたように、このクラスの製品を選ばれる方は、音質以外にも機能性やサイズやデザインを考慮して総合判断されると思いますので、こちらはあくまでも音質だけでの評価であることを強調しておきます。同じ点数でも音の味付けは多少異なりますので、試聴は推奨です。結論として、音質だけなら2万円出してK-505のデッドストックを狙うのが明らかに賢いと思いました(記事を出した直後、一時的にシルバーは3万円台に高騰していました)。対抗馬はSONYのCMT-SBT40、とにかく安く抑えたければPANASONICのSC-PM250といったところでしょうか。

  • 20(約2万)K-505(KENWOOD)2015
  • 15(約1.2万)X-SMC02(PIONEER)2017
  • 17(約1.4万)X-CM56(PIONEER)2016
  • 17(約1.6万)X-U6(ONKYO)2016
  • 16(約1.6万)SC-HC395(PANASONIC)2016
  • 16(約1.5万)SC-HC295(PANASONIC)2016
  • 16(約1.1万)SC-PM250(PANASONIC)2015
  • 18(約1.7万)CMT-SBT40(SONY)2014

個別レビュー

 X-SMC02

 一体型コンパクトに属する製品、このクラスの製品のアンプの出力は10W+10W、出ても15W+15W程度なので、そこまでパワフルさはありません。バスレフとあるのはスピーカーの種類です。小型スピーカーはサイズ的に低音が稼げないので、よほどのことがない限りバスレフ型と呼ばれる形状のスピーカーを採用し、低音を増幅させることで低音を稼いでいます(ヘルムホルツ共鳴)。バスレフ型の欠点は、低音を増幅させているがゆえに、音がぼやけて解像度が犠牲になることです。したがって、小型スピーカーで密閉型(これもスピーカーの種類)を採用している製品があれば、低音はきっぱり諦めて解像度を重視していることになります(ELACとかね)。

スピーカーはフルレンジのものとウーファー+ツイーターのものがあると思いますが、基本的に分かれていたほうが音質的には有利だと考えておいて下さい。本製品は中音域以外はこれといって見どころのない評価となっており、解像度・量感ともに物足りませんでした。評価は15/25となりました。

 X-CM56

50mmコーン型ツイーターでやや高音重視の構成、スマホや内蔵スピーカーとの違いは十分に感じられる製品だと思います。このクラスの製品に解像度まで望むのはお門違いというもの。評価は17/25となりました。

 X-U6

劣化版K-505といった感じで、非常にベーシックでやや無個性な音が流れてきます。評価は X-CM56と同じく17/25となりました。真のベンチマークはこの子です。

 SC-HC395

小型スピーカーは低音を稼ぐため、通常バスレフにします、と書きましたが、低音を稼ぐもう一つの方法がパッシブラジエータを使うことです。パッシブ(受動的)という言葉から想像されるように、自身が動くのではなく、動かされることで低音を増幅します。サンワサプライの図解が分かりやすいです。パッシブラジエーターの最大のメリットは解像度の低下を抑制できる点で、ラジエーターを活用した製品が得意なメーカーといえば、冒頭のBoseさんです。

パッシブラジエーターとは - サンワサプライ株式会社

 SC-HC395はフルレンジ+パッシブラジエーターの構成で、アンプが25W+25W。パナ製品ラインの中では若干異質な構成で、実験要素も入っている気がします。次世代に期待ということで、点数は16/25でした。

 SC-HC295

 X-SMC02と同じく10W+10W+80mmフルレンジの構成、やや解像度で稼いだ結果、 SC-HC395と同じ16/25となりました。

 SC-PM250

 上位機種が軒並み高評価高コスパなので、250にも期待が集まります。10W+10W+100mmフルレンジで、全音域、解像度など特に目を見張る点はありませんでした。点数はまたしても16/25となりました。残念ながら、上位機種のように音質が素晴らしいのに安い!という結果にはなりませんでしたが、実勢価格的にコスパは悪くないと思います。

 CMT-SBT40

 25W+25W+95mm+57mmとスペックは豪華だし高音は綺麗に出ているけど、K-505と比べると音像定位など細かいところに差が。評価は18/25となりました。いい製品ですね。