photo credit: xenohawk via photopin cc

ネットワークオーディオラボ ぶろぐ

ネットワークオーディオ・PCオーディオ・ハイレゾ音源関連の最新ニュースをお届け♪

シアターバー音質比較 2021

はじめに

コロナウイルスの蔓延、度重なる緊急事態宣言等により、「おうち時間」を充実させるための家庭内設備への投資が顕著に見られます。料理や美容とともにオーディオへの投資も人気があるらしく、中でもホームシアターへの投資がかなり人気のようです。ホームシアターを組む上で最大の障害となるのがスピーカーのセッティング、ピュアオーディオと同様、本格的に取り組もうと思ったら配線や配置との終わりなき戦いに突入します。オーディオヲタクならいざしらず、世の中の大半の一般人はそんなことしたくないでしょう。

f:id:yamanatan:20200828005050j:plain

Battle Stock photos by Vecteezy

 

そこで登場したのが、置くだけで簡単に立体音響が楽しめるシアターバーです。本ブログでも2015年に一度音質比較していますが、その後の立体音響の技術革新にはめざましいものがあり、さらにソノスやパナソニックといった新勢力の参戦もあったため、改めて音質比較してみようということになりました。ちょうど家電批評で特集もあったことなので、家電批評のランキングも踏まえて、レビューしていきましょう。ピュアオーディオと映画オーディオ(ホームシアター)との思想の違いについては、過去の記事を参考にしてください(これも古いけど)。

networkaudiolab.hatenablog.com

networkaudiolab.hatenablog.com

基礎知識

ドルビーアトモス

hometheater.phileweb.com

Dolby Atmos」と「DTS:X」の違い

www.ymge.com

ARC・eARC

kakakumag.com

レビュー

SONY HT-ST5000

まずは大正解のHT-ST5000、唯一の15万円以上カテゴリでほぼ対抗馬がいません。家電批評では当然の一位(コスパを考慮していないので当然)です。音質についてはほぼ妥協がなく、敢えて難点をあげるなら中音域の明瞭性がピュアオーディオ対比で物足りないですが、十分な音質です。予算が許すのであれば、ドルビーアトモス環境を作る最善の選択肢になると思いますが、明らかに性能対比で高価です。

あえて対抗馬をあげるのであれば、価格帯的にDALIのKatch Oneですが、これはどちらかというとピュアオーディオ寄りの製品で、立体音響の洪水に浸りたい映画ファンからすると、恐ろしく地味で面白みのない音が流れてくるだけの棒でしかないので、選択肢には入らないと思います。音についていえば、いつものDALIよりも、多少低音が強調されている一方で色気が失われた音でした。音楽視聴メインであれば聞いてほしいですが、やや割高感がありました。

ちなみに、本当に予算度外視、その他様々な困難に打ち克つ気があるなら、Sennheiser Ambeoという選択肢もあります。でも、そんな労力をものともしないのであれば、サウンドバー買うんじゃなくて、サラウンドシステムを組んだほうがいいです(し、そちらの方が安いです)。

アンベオサウンドバーglobal.shop.sennheiser.com

www.phileweb.com

追記:と書いていたら、なんと日本でもAmbeoが発売されるとのこと!ホームシアターサウンドバーガチ勢の本命がとうとう上陸ですね(2021/6/24)

www.phileweb.com

Panasonic SC-HTB900

テクニクスを復活して以降、躍進を続けるPanasonic。HTB900もテクニクスの設計思想を取れ入れたと銘打っています。機能的にはHDR10+やDolby Visionに対応していない点が将来的にネックになるかもしれません。音質は非常に素晴らしく、テクニクスらしさを随所に感じます。ただ、ピュアオーディオ的なこだわりを諦めなかったがゆえに、サウンドバーとしての特色である立体音響性能はやや弱めで没入感は限定的、これは求められる音の違いを理解していないがゆえの過ちなのかと思います。ピュアオーディオ的な哲学に基づいたシステムで映画を見ても、最強のシアター環境にはなりません。オーディオ環境とシアター環境とは別物と考えるべきです。説得的な音の明瞭さやサラウンド能力は素晴らしいので、DALIと同じく、音楽視聴メインであれば検討するべきサウンドバーです。

Sonos Arc

たしか日本に上陸したのは2018年、それ以降、たしかな音質とデザイン、接続性の高さによって人気になったSonosのサウンドバーArcです。予算10万円以上でドルビーアトモス環境を作りたければ、Arc一択になるかと思います(パナは厳密なアトモス環境ではないので)。高音の明瞭さはそれなりですが、低音がとにかく充実しており、映画サウンドかくあるべし、という印象です。上の二機種に比べると原音再生能力は控えめ、音像定位はやや不安定でした。映画サウンドに特化しているので、音楽視聴メインだと推奨レベルが1落ちますね。性能対比で適切な価格付けだと思います。パナソニックにはSonosを目指してほしいと思いました。学ぶところは多いはずです。

SHARP 8A-C22CX1

VGP2021、7.5万円以上の金賞受賞がSHARPサウンドバーです。SHARPといえば、1bitサウンドで一世を風靡したメーカーで、期待感があります。立体音響再生技術「OPSODIS(オプソーディス)」がどの程度没入感に効果があるか興味深かったです。結論から言えば、柔らかだけど明瞭さに欠ける高音、ぼやけた低音が致命的でした。OPSODISの恩恵なのか音像定位は巧いですが、一方で音場感や没入感は平均以下でした。これを買うなら、もう少し奮発してSonosを買うか、もう少し安いHT-G700を買ったほうがいいです。

Sony HT-G700

VGP2021、5万円以上の金賞受賞がSONYのHT-G700です。Sonosがいくらいいとは言っても、流石に10万円も出せない、そこまで自分は映画マニアでも音質ヲタクでもないという人は少なくないでしょう。それでは5万円は?とくにそれなりのお値段のテレビを使われているのであれば、音質にそれほどのこだわりがなかったとしても、5万円程度のサウンドバーは設置するべきです。そこで、おすすめなのがHT-G700です。ST5000は一般人からすると、半分ジョークのような製品かもしれませんが、G700は多くの人にとって極めて現実的で、コスパも満足度も高い選択肢です。

立体音響性能について、Sonosと比べればやはり価格なりの明確な差が存在するわけですが、しっかりとAtomos環境を構築できている点がパナソニックと異なるところです。音の明瞭さは大きな弱点で、重層的な音の聞き分けなどには適さないです。ただ、音像定位はしっかりとできていて、不満がありません。全体として、感動こそしないけど、そつなくいい映画サウンドを奏でるコスパに優れた優秀なサウンドバーです。

Sony HT-X8500

家電批評では実質(コスパを考慮すると)1位扱いを受けていたのがHT-X8500、VGP2021、3万円以上の金賞も受賞しています。音の広がりは限定的で、お値段それなりの印象ですが、しっかりとAtmos環境を構築できており、低音もライトユーザーには申し分ないです。低音は申し分ないのですが、やや響きすぎの嫌いがあり、中音域の不明瞭さを際立たせてしまっている点が残念です。メリハリの効き具合もG700とは大きな差があり、どの項目もやや物足りなく感じます。この価格でAtmos環境を構築している点は評価できますが、もう少し奮発してG700を買うべきだと思います。

Sonos Beam

 家電批評ではX8500に大きく水をあけられる結果に終わったSonosのBeam、VGPでは受賞すら逃しています。たしかにAtmos対応していないのは大きな欠点ですが、そこまで致命的なのか、といった点が興味深いです。結論から言えば、立体音響こそないものの、非常に満足度の高い音です。高音域がやや制御されていないものの、中音域は安定しており、低音域のパンチも効いています。たしかに音の広がりはいまいちで、没入感はほとんど得られませんがベースの音作りがしっかりしているので、それほど不満は感じませんでした。とくに音楽視聴メインの人におすすめしたいですね。

まとめ

ということで、シアターバー7種類を比較試聴しました。まとめておくと、

  • 予算と情熱が許すならSONYのHT-ST5000
  • 10万円以上、映画メインならSonos Arc、音楽メインならPanasonic SC-HTB900もあり
  • 5万円以上ならSony HT-G700
  • 5万円未満、映画メインならお金を貯めてHT-G700を買って。音楽メインならSonosのBeamは悪くない選択
  • ヤマハDolby Atomos・eARCとの兼ね合いで、今回は見送りました。

参考になれば幸いです!