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本音のオーディオ入門4:ネットワークオーディオプレーヤー+パッシブスピーカー(U10万円システム)

はじめに

1・2・3に引き続き、MONOQLO2021年11月号「本音のオーディオ入門」について、色々と書いていきたいと思います。1回目はパワードスピーカー、2回目はDAC、3回目はアンプ+パッシブスピーカーについて語りました。

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ネットワークオーディオプレーヤー+パッシブスピーカーセット(U10万円)

本誌では、U10万円のセットとして、MARANTZのNA6006+PresonusのEris E5 XTが紹介されていました。このクラスになると機器の選択肢は言うまでもなく、構成の選択肢も幅広くなってきます。

前回までの繰り返しになりますが、オーディオの基本的な構成は、プレーヤー+DAC+アンプ(プリアンプ+メインアンプ)+(パッシブ)スピーカーです。原理的にはすべてをばらばらの機器にするディスクリート構成の音質がもっともよくなりますが、スペースが必要、利便性が低い、ケーブルが多くなるのでスタイリッシュではない、実際には機器間の相性があるので、ディスクリートにするとむしろ音質が悪化する場合が多々あるなど、様々なデメリットがあります。オーディオ道とは、自分にとって最適な機器の組み合わせを、場合によっては音楽のジャンルや曲によって探求する楽しみのことです。一方、大半の人間はそんなことに関心がないので、最適な組み合わせを探求するのは苦痛でしかなく、どんなジャンルでも90点以上の音質が期待できる利便性の高いシステムが欲しい。オーディオ道を探求するオーディオマニアのアドバイスが参考にならない場合が(多々)あるのは、このギャップによるところが大きいです。

システムのディスクリート化が音質と利便性のトレードオフに直面することが分かったところで、逆に考えると、各パートを合成すれば音質を犠牲にしつつ、利便性を高められることになります。では、どこを合成すればよいでしょう。もっとも定番のものが、アンプ+スピーカーを合成したパワードスピーカーです。Bluetoothスピーカーやスマートスピーカーなども基本的にこのカテゴリーです。プレーヤーとDACスマートフォンやPCに任せて、後はスピーカーに繋ぐだけで、いい音が聞けるという触れ込みで、これが令和の基本構成と考えていいと思います。

スマホ・PC(プレーヤー+DAC)+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

この基本構成から、ディスクリート化を進めていけば、利便性は犠牲にしつつ音質を向上できることになります。どこをディスクリートにするのが効果的でしょうか。連載の第二回ではプリアンプを分離する案が出されていましたが、これは個人的に疑問のある提案でした。たしかにプリアンプを分離することに意味がないわけではないですが、分離するならDACのほうが効果的ですし将来性がある、という話をしました。

本誌の提案:スマホ・PC(プレーヤー+DAC)+プリアンプ+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

私の提案:スマホ・PC(プレーヤー)+DAC+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

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そして、第三回ではパワードスピーカーをアンプとパッシブスピーカーに分離する案が出されていましたが、主に予算(U4万円)の理由から、私はあまり賛同できませんでした。逆に言えば、予算さえクリアできれば、そして音質が重要であれば、アンプとスピーカーは分離したほうがいいです。目安として、U5万円まではDAC+パワード構成のほうがいいと思っていますが、U10万円なら分離を考えるべきです。

本誌の提案:スマホ・PC(プレーヤー+DAC)+アンプ+パッシブスピーカー

私の提案:スマホ・PC(プレーヤー)+DAC+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

ということで、第4回です。MARANTZのNA6006+PresonusのEris E5 XTの構成は、スマホやPCの代わりにプレーヤーを使いましょう、というもので、構成自体は令和の基本構成通りです。結論から言えば、この提案もあまり賛同できません。たしかにプレーヤー+DACを本格的なプレーヤーに替えることは非常に重要です。スマホやPCはノイズの塊なので、そもそも音楽を再生する機器として適切ではありません。ただ、DACさえ分離してしまえば、プレーヤーが音質を左右する程度は(アンプと)スピーカーに比べると小さいので、予算10万円の5割近く(8割、DACが3割として計算)をプレーヤーに注ぎ込むのはややバランスが悪いようにも思います。MARANTZのNA6006はHi-Fiオーディオの基幹部にできる素晴らしい機体で、DACのES9016K2Mも申し分ありません。ただ、10万円のシステムにはバランスが悪いと思います。

本誌の提案:オーディオプレーヤー(プレーヤー+DAC+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

私の提案1

それでは、どのようなシステムを組めばいいでしょう。第一案は第二回・第三回と同様のDAC分離構成です。ZEN-DACを組みこんで、DACをノイズの塊であるスマホ・PCと切り離します(DACチップ単体ではES9016K2Mにやや分がありますが)。残りの予算はパワードスピーカーにつぎ込んでください。実勢5万円のYAMAHA MSP5 STUDIOで十分、少し予算オーバーしていいのなら、プロの現場でも利用されているGENELECの8010APすらもシステムに組み込むことができますし、DACをAstell&Kern PEE51 AKにすれば、予算内に収まります。接続性を考えると、8010APではなくてG Oneのほうがいいかもしれません。余談ですが、ここでDAC部分をRME ADI-2 DAC FSに換えれば、最高レベルの20万円システムが完成します。

スマホ・PC(プレーヤー)+DAC+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

  1. ZEN-DACYAMAHA MSP5 STUDIO
  2. PEE51 AK+GENELEC 8010AP (G One)
  3. ZEN-DACGENELEC 8010AP (G One)(やや予算超過)
  4. RME ADI-2 DAC FS+GENELEC 8010AP (G One)(予算20万円級システム)

 

私の提案2

第二案は令和の基本構成に最強のパワードスピーカーを入れる、です。当然ながら、利便性は犠牲になりません。クリプトンのKS-55はちょうど10万円ですから、これで大丈夫です。音質と利便性の総合力では侮れない選択肢になります。また、逆に合成を進めて全部入りのシステムを買うのも推奨です。当然ながら、こちらも利便性は最高評価です。たとえば、TechnicsのSC-C70MK2やSC-C50は10万円前後ですが、聴き比べるといかにスピーカーの性能が音質を左右するか実感できると思います。

スマホ・PC(プレーヤー+DAC)+パワードスピーカー(アンプ+パッシブスピーカー)

  1. KS-55(厳密に言えば、KS-55についてはDACが出てこないですが、他との対比で便宜的に上のように書いておきます。)

全部入りシステム

  1. SC-C70MK2
  2. SC-C50

www.kripton.jp

私の提案3

提案2は半分ネタ、半分本気ですが、一応オーディオブログなので、第三案はディスクリート構成を紹介しましょう。ディスクリートと言いながら、プレーヤー・DAC・プリメインアンプ全部入りのMarantz、M-CR612にパッシブスピーカーを組み合わせる構成です(このブログではお馴染みですが)。実勢6万円程度想定で話を進めますが、コロナによる供給制約の影響もあるのか、欠品のことも多いのがややネックです。これにDALIのSPEKTOR2を合わせれば、立派なHiFiシステムの完成です。オーディオに興味を持ってくれば、スピーカーをいいものに変えていけばよいでしょう。その他のスピーカーの選択肢はミニコンポ2021を参照してください。そろそろ2022の時期ですが、それほど候補は変わっておらず、OBERON1や3030iが安定してお勧めできます。

システムコンポーネント+パッシブスピーカー

  • M-CR612+SPEKTOR2
  • M-CR612+OBERON1
  • M-CR612+3030i

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おわりに

ということで最終回の第4回目はU10万円のシステムでした。U10万円は資金配分次第で様々な選択肢を取れるので、選ぶ楽しみと苦しみが味わえるいい予算帯だと思いますが、失敗したときに失うものが多いので、慎重に機器を選びたいですね。本誌ではHiFiシステムでも採用されるオーディオプレーヤーにコスパのいいパワードスピーカーを組み合わせる構成でしたが、音質に直結するスピーカーに予算を振り分けたほうが音質を上げることができると思います。

まとめ

  • 本誌の構成:NA6006+PresonusのEris E5 XT
  • 私の推奨構成1:DAC分離構成
  • 私の推奨構成2:パワードまたはオールインワン
  • 私の推奨構成3:DAC・アンプ内蔵プレーヤー+パッシブスピーカー
    • M-CR612+SPEKTOR2
    • M-CR612+OBERON1
    • M-CR612+3030i