絶対失敗しないPCオーディオ DAC選びのコツとおすすめのDAC(前編)
はじめに
皆様こんにちは。
今回は、以前から何度か言及してきたDACについて色々と書いてみたいと思います。
PCオーディオを始めようと思っている人にとって、最も機能を理解しづらい機械がこのDACだと思いますが、実は音質の鍵を握っているのもこのDACです。今回はDACとは何かというところから一緒に勉強していきましょう。
http://www.flickr.com/photos/betta_design/2200198472/
DACとは
前回の、予算別PCオーディオまとめ - ネットワークオーディオラボ ぶろぐでも少し触れましたが、DACとはデジタル音声データ(信号)をアナログ音声信号に変換する機械です。それでは何故こんな機械が必要なのでしょうか。
まず、大前提として知っておかなければいけない事実が2つあります。それは『PCはノイズのかたまり』、そして『デジタル信号はノイズに強く、アナログ信号はノイズに弱い』ということです。
『PCはノイズのかたまり』
PC内部には様々なパーツがあり、パーツ同士の相互干渉によってノイズが発生します。ノイズが大きければそれだけ本当の音の情報を耳で聞き取ることが難しくなるため、オーディオ製品という観点からすれば、PCは最悪な製品ということになります。(ちなみに、『耳に届く音=本当の音(信号量:シグナル)+雑音(ノイズ)』と考えることが出来ますが、このシグナルとノイズの比率を情報工学の用語でSN比と呼んだりします。)
『デジタル信号はノイズに強く、アナログ信号はノイズに弱い』
ここではあくまでも基礎的な原理についてざっくりとした説明をしましょう。一般にデータは以下の順番で伝達されます。
- データを信号に変換する
- 信号がノイズにさらされる
- ノイズ付きの信号がデータに変換される
アナログ信号の場合、
- 9という数値データが9というアナログ信号に変換される
- ノイズの影響を受けて、9+0.3=9.3という信号になる
- 9.3というアナログ信号が9.3というデータに変換される
ノイズ(+0.3)の影響を受けて、元の値と違う値が伝わってしまいました。
一方でデジタル信号の場合、
- 9という数値データがデジタル信号1001に2進数変換される
- 信号1001がノイズの影響を受け、[1.3 0.3 0.3 1.3]という信号になる・・・と言いたいところだが、デジタルデータは0か1の値しかとらない。そこで、0.5未満であれば0、0.5以上であれば1として解釈する(閾値を0.5に設定する)とすると、[1.3 0.3 0.3 1.3]⇒[1 0 0 1]という信号になる
- [1001]⇒9というデータに変換される
ノイズ(+0.3)を受けましたが、元の値をそのまま伝えることができました。
それでは、もしもノイズが充分に大きいとどうなるでしょうか。例えば+0.5であれば、デジタル信号は[1001]⇒[1.5 0.5 0.5 1.5]⇒[1 1 1 1]⇒15となってしまうので、デジタル信号であってもノイズの影響を受けることになります。
ノイズの値が小さくても影響を受けてしまうアナログ信号、小さいノイズであれば影響を受けないデジタル信号というそれぞれの特長がお分かりいただけたでしょうか?
それらを組み合わせると
ここまでくれば、どうしてDACが必要なのか分かった方も多いでしょう。ノイズの多いPC内でノイズに弱いアナログ信号を生成してしまうと、情報がノイズの影響を強く受けてしまうことになります。ノイズだらけのPCの中にいる間は、デジタル信号のままで情報のやりとりをしたほうがいいのです。
まとめておくと、DACがない場合、
- PC内でデジタルデータ⇒アナログ信号
- アナログ信号⇒アナログ信号+ノイズ
- スピーカー
となりますが、DACがある場合は
- PC内でデジタルデータ⇒デジタル信号
- デジタル信号⇒デジタル信号+ノイズ⇒デジタル信号
- デジタル信号がDACに送られる
- DACでデジタル信号⇒アナログ信号
- スピーカー
となり、PCノイズの影響を受けにくくなるというわけです。
DAC選びのコツ
DACの必要性が分かったところで、次はどういったところに気をつけてDACを選ぶべきか考えていきましょう。既にかなり長~くなってきたので、おすすめのDACは次回に持ち越しかな~とか思い始めてきましたが、とりあえず続けます(笑)
http://www.flickr.com/photos/tambako/6992962266/
出力
先ほど、PCからDACにデジタル信号を送ると書きましたが、これには大きく分けて3つの方法があります。
まず、上のS/PDIF出力ですが、これらはどちらもPCオーディオの世界では一般的ではありません。PCオーディオの世界では、と書いたのには理由があって、S/PDIF同軸は高級オーディオの世界で有名ですし、S/PDIF光デジタルはゲーム機などで広く使われているので、マイナーな存在というわけではないからです。しかし、S/PDIF出力端子が搭載されているパソコンは少ないため、PCオーディオ業界での知名度はUSBに比べると著しく劣っています。
さて、単純に音質だけを比べるのであれば、同軸端子がもっともよく、次にUSB、最後が光デジタルという順番になるというのが支配的な意見です。ただ、パソコンから直接同軸出力しようと思ったら、サウンドボードを追加する必要が有るため初心者に易しくありません。DDCを利用して、USBから同軸変換するという方法もあるにはありますが、
のため、現在所有している・購入予定のDACが同軸デジタル入力端子にしか対応していないとかでもない限り、USB出力で問題ないと思います。
おまけ
ちなみにそういうマニアックな人向けにUSB⇒S/PDIF同軸変換出来る機器を少し紹介しておくと、現在USB-DDCの最高峰として名高いM2TECHのhiFace Evoや、DACをパワーアップするDDC - ネットワークオーディオラボ ぶろぐで紹介したResonessence LabsのCONCERO、そしてiFi AudioのiFi micro iLinkなどが候補になってくると思います。 iFi micro iLinkは最近友達が買ったので聞いてきましたが、ハイレゾ音源の高音で感じる危うさがかなり軽減されます。高音での安定性が欲しいなら迷わず試聴をオススメします。
iFi Audio 「iFi micro iLink」据置型 USB DDC(デジタル-デジタルコンバーター)
- 出版社/メーカー: iFi Audio
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る
対応サンプリング周波数
現在市場に出回っているUSBDACが対応している周波数は、大きく分けると48kHz, 96kHz, 192kHzの3つが存在します。CDの量子化ビット数・サンプリング周波数は16bit/44.1kHzですから、少し前までDACは48kHzまでに対応していればよかったわけですが、現在はハイレゾ音源があるため48kHzでは不十分となりつつあります。ハイレゾ音源を楽しむ予定があるのであれば、最低でも96kHz、できれば192kHzまで対応しているDACをおすすめします。
最近はDSDファイルに対応しているDACも少なからず存在します。DSDファイルは、WAVやFLACといった現在普及しているハイレゾファイルに比べてファイルサイズの効率性が高いので、将来有望なフォーマットです。しかし普及するかどうかは今のところ全くもって不明ですし、将来的にアップデートでDSDに対応する可能性もあるので、すぐにDSDを使う予定がないのであれば、無理にDSD対応のDACを買う必要はないでしょう。
長くなったので続きは後編で。
後編ではおすすめのDACと性能の比較をやっていきたいと思いますので引き続きよろしく!!
⇒絶対失敗しないPCオーディオ DAC選びのコツとおすすめのDAC(後編) - ネットワークオーディオラボ ぶろぐ