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ネットワークオーディオラボ ぶろぐ

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本音のオーディオ入門2:DAC(とプリアンプ)

はじめに

1に引き続き、MONOQLO2021年11月号「本音のオーディオ入門」について、色々と書いていきたいと思います。前回は初心者おすすめの廉価パワードスピーカーだけで終わってしまいました。

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U10万円、初心者おすすめアンプ

最初のセットはこれが大正解でVL-S3と組み合わせて取り上げられていたのが、プリアンプのNobsound, P2 2021 miniとAIYIMA, TUBE-T5です。プリアンプ+パワードスピーカーの構成は、たしかにオーディオを趣味として楽しむ層には分かっているな、と思わせるものですが、アンプが一体何をするかも知らない初心者におすすめするには、やや難易度が高い印象です。

まず、アンプの説明からしておくと、アンプとは音を増幅する装置だと思ってください。一般的にアンプというとき、たとえば家電量販店で「アンプを探している」と言ったときに出てくるものは、大半がプリメインアンプと呼ばれるアンプです。プリメインアンプとはプリアンプ(コントロールアンプ)とメインアンプ(パワーアンプ)を合体させたもので、それぞれ電圧を増幅、電力を増幅させる働きを持ちます。

今回の構成はVL-S3がパワードスピーカー、つまりプリメインアンプやメインアンプを内蔵したスピーカーなのに、なぜ、さらに(プリ)アンプを接続するのでしょうか?たしかに、プリアンプを接続しなくても、パワードスピーカー単体で十分な音質を楽しむことができます。ただ、細かい話をすると、音量調節は独立したプリアンプに任せたほうが音質的に有利です。また、プリアンプを通すことによって、音の味付けを変えることができるというメリットがあります。今回紹介されている真空管アンプなどは、その典型といっていいでしょう。ある種のノイズというか、写真でいうところのボケ感みたいなものを音に追加してくれます。こうした機器の組み合わせから自分の好みの組み合わせを探すのがオーディオ道の醍醐味だとヲタクは考えているわけで、このような構成をディスクリート構成といいます。

原理主義者はすべてを分離したいので、プリアンプ+メインアンプ+パッシブスピーカー(アンプを内蔵していないスピーカー)という完全ディスクリート構成を好みます。一方で、音質と手軽さのトレードオフが悩ましいため、近年は全部入りのパワードスピーカーが主流になりつつあります。配線がスッキリするのも全部入りの優位性ですし、プリ・メイン・スピーカー間の最適化がメーカーによって行われている点も優れています。一昔前はBTOよりも自作PCのほうがコスパに優れているなんて話がありましたが、パワードスピーカーの話も似たようなものです。以前は完全ディスクリート構成(~自作PC)のほうがコスパ的に優位でしたが、現在は全部入りパワードスピーカー(~BTO)と同じくらいで、パワードのほうが優れている場合も少なくありません。長年オーヲタやっていた人が、手軽なオーディオセットを買ったら、自作の100万円のシステムよりも音質がよかったなんていうのはざらにあります。

Nobsound, P2 2021 miniとAIYIMA, TUBE-T5はたしかにコスパのいいプリアンプだと思いますが、VL-S3と組み合わせて2万円の構成にするのと、2万円の全部入りパワード、たとえばJBL PROの104-BT-Y3とどちらがおすすめでしょうかと聞かれると、手軽さも考慮して私は後者を勧めます。もちろん、高価格帯だとディスクリートの優位性(個性的な音の追求)も出てくるのですが、2万円程度の価格帯で無理にディスクリートにしなくても・・・してもそんなにメリットある?というのが正直な感想です。

次回取り上げる予定のU4万円構成ではプリメインアンプ+パッシブスピーカーが紹介されていますが、この価格帯でも全部入り対比でやや厳しいかなと思っています。ディスクリート構成を初心者に勧めたい気持ちは痛いほど分かります(オーディオ沼に引き込むために)が、予算10万円までは、無理にディスクリートにこだわらず、前回紹介したような全部入りパワードを選んでおくほうがいい気がします。

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もう一つの選択肢が、プリアンプではなくDACを追加する方法です。AIYIMA, TUBE-T5はDACとしての機能も持っているので、そういう意味ではいい選択肢で、搭載されているCmedia「HS100B」のコスパも悪くありませんが、DAC専用機には劣ります。

ちなみに、DACとはデジタル・アナログ・コンバーターの略で、デジタルな音源情報を、スピーカーやヘッドホン、そして人間の耳が理解できるアナログ信号に変換する機械です。一部の例外を除いて、音楽を聞く際に必ずどこかでこのデジタル情報をアナログ信号に変換して出力する処理が行われていると思っておいてください。かつて用いられていた(今も?)レコードや磁気カセットテープにはアナログ情報がそのまま保存されていましたが、これらのフォーマットは壊れやすく、不要なノイズも含まれていたため、そうした欠点を克服したデジタル情報が記録されたCDが誕生し、デジタルオーディオ革命が始まったという経緯があります。

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DACも上を見始めるときりがない製品群ですが、初心者でも買えて、システムをアップグレードしても陳腐化しないという目線で探すと、Astell&Kern PEE51 AKが第一候補でしょう。高級機にも見られるCirrus Logic社製Master Hi-Fi DAC CS43198をL/R独立したデュアルDAC構成でこの価格は非常にコスパがいいです。現在は欠品中ですが、Audiolab M-DAC nanoはより手軽で、素性の良いCS43130を搭載したDACなので、見かけたらこちらもよいでしょう。そして、もう少し高くても良いから、陳腐化しない・最後のDACのつもりで、ということであれば、iFi Zen DAC V2もよいでしょう。バーブラウンのBit-Perfect DSD & DXD DACを使用しており、違いを作ることができるDACです。

おわりに

今回はなぜプリアンプ+パワードの構成が初心者にあまりおすすめできないか、そしてDAC+パワードのほうがよいことを説明した上で、U3万円の構成で利用できるDACを3種類紹介しました。次回もお楽しみに!

本音のオーディオ入門1:パワードスピーカー

はじめに

MONOQLO2021年11月号で久しぶりに「本音のオーディオ入門」という名前のオーディオ特集が組まれています。同一方針の特集は家電批評の2019/8, 2018/8で組まれていましたが、2020年からはAV家電に組み入れられてしまったのか(?)、特集が組まれなくなって寂しい思いをしていました。

再三書いているのですが、オーディオ業界はAV家電業界に比べると商品入れ替えのスピードがそれほど速くないので、新商品を紹介してレビューを書きたい業界からすると、あまり魅力的でない点は認めます。一方で、オーディオ初心者は毎年一定数存在する以上(巣ごもり傾向で増加しているかもしれないし)、初心者向け記事に一定の需要はあるわけで、できれば定期的に特集を組んでほしいなというのが偽らざる本音です。

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U10万円、初心者おすすめオーディオセット

一昔前とは異なり、現在のオーディオ業界では、プレーヤーをスマートフォンやPCに任せて、スマホやPCからの音声データをいい音で聞くため、パッシブスピーカー+アンプ、もしくはアクティブスピーカー(パワードとも、アンプ内蔵という意味)を接続するのが初心者向けの標準構成になります。手軽さや置き場所を考慮するとアクティブスピーカーを単独接続するのがベター、さらに音質を犠牲にして手軽さを追求するとBluetooth接続にするのが常套手段でしょう。

最初に紹介されているのがTASCAMのVL-S3、素性は老舗TEACでしっかり、実勢価格8000円程度で購入可能、コスパの高さから市場では欠品が続いているアクティブスピーカーです。解像度や量感は物足りないものの、モニターライクで変な味付けがされておらず、好印象です。入力もRCAと3.5mmジャックと必要十分、ただし無骨なデザインは好き嫌いが分かれそうです。

さらに考えてみた

ここからは雑誌の内容から離れて対抗馬のスピーカーについて考えてみましょう。私はいわゆる音ヲタなので、当然にピュアオーディオ、原音再生信者の一人です。一方で、それほど音にこだわらない一般的な環境において、下手に原音再生を目指すと、ノイズや音割れによって音が劣化することも嫌というほど知っています。そのため、廉価オーディオに関して言えば、ある程度の味付けを許容しています。

同価格帯でモニターライク&許せる味付けで絶妙なバランス感覚を保っているのが、JBLPebblesです。これは発売以来、一貫しておすすめしています。VL-S3では音が地味すぎると感じる人や、もう少し遊びのあるデザインが欲しければ、比較検討するべき一機です。

VL-S3よりも解像度をさらに稼ぎたいのであれば、TEACと同様に素性の良いFOSTEXのPM0.3Hを検討するとよいでしょう。こちらも過去に何度も取り上げている製品で、単独でも素晴らしい音質ですし、ボリュームコントローラーという名のDACを組み合わせると、本格的なデスクトップオーディオ(ハイレゾ対応)が完成します。

VL-S3は有線接続のみなので、Bluetooth接続したい人からするとやや億劫に感じるかもしれません。JBL PROの104-BT-Y3はBluetooth接続が可能(さらに6.35mm端子にも対応!)で、デザイン性の良さも好印象のパワードモニターです。量感もVL-S3より稼げるので、低音好きにはよいです。以前紹介したPreSonusのEris E4.5のBluetooth対応ver. Eris E4.5 BTも候補にしておくとよいでしょう。

VL-S3より量感を稼ぎたいのであれば、JBL PROの104-BT-Y3とともに候補に上げたいのがIK Multimedia iLoud Micro Monitor、中田ヤスタカさんもサブで使っていますし、Bluetoothにも対応しています。

モニターライクな音特性はそのままに、総合的に音質をアップさせたいのであれば、PreSonusのEris E4.5、YAMAHAのMSP3やMSP5辺りを予算に合わせて選ぶとよいでしょう。以前はFLUID AUDIOのF5、JBLのControl X、Control X Wirelessなども勧めていましたが、現在は販売終了していますね。

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そして、最後にKRIPTONのKS-11とKS-55、そして最新機種であるKS-55 Hyperを紹介しておきましょう。それぞれ一台でシステムを完結できる・ピュアオーディオ環境を築くことができる絶大な決定力を持っています。KS-55の先祖であるKS-3HQMはPCオーディオベストバイ2018にも登場します。

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さいごに

久しぶりのオーディオ特集に興奮して筆を取ったわけですが、1ページ目のパワードスピーカーの話を広げただけで、話が終わってしまいました。まだまだ書き足りないので、また時間があるときに続きを書こうと思います。とりあえず、お疲れさまでした。記事の内容が参考になれば幸いです。

パナソニック、テクニクス技術搭載のハイレゾミニコンポを発表

 SC-PMX150の後継機が来ましたね。2017年以来の新製品、しかも(コンポとしては)フラッグシップ機ですが、見た目はあまり変わらない?ように見えます。

そろそろ代替わりする可能性があり、その際は弱点だった外装のデザインをTechnics譲りの高級仕様にして値上げする可能性がある

と予想したのですが、外装のデザインはそのままに、Tuned by Technicsで付加価値をつけてきたようですが、うーん、そこに付加価値を感じる人はテクニクス買うんじゃないかしらと思ってみたり。

なんにせよ、久しぶりの新製品なので、試聴を楽しみにします。試聴結果はミニコンポ2022で公表する予定です。

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シアターバー音質比較 2021

はじめに

コロナウイルスの蔓延、度重なる緊急事態宣言等により、「おうち時間」を充実させるための家庭内設備への投資が顕著に見られます。料理や美容とともにオーディオへの投資も人気があるらしく、中でもホームシアターへの投資がかなり人気のようです。ホームシアターを組む上で最大の障害となるのがスピーカーのセッティング、ピュアオーディオと同様、本格的に取り組もうと思ったら配線や配置との終わりなき戦いに突入します。オーディオヲタクならいざしらず、世の中の大半の一般人はそんなことしたくないでしょう。

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Battle Stock photos by Vecteezy

 

そこで登場したのが、置くだけで簡単に立体音響が楽しめるシアターバーです。本ブログでも2015年に一度音質比較していますが、その後の立体音響の技術革新にはめざましいものがあり、さらにソノスやパナソニックといった新勢力の参戦もあったため、改めて音質比較してみようということになりました。ちょうど家電批評で特集もあったことなので、家電批評のランキングも踏まえて、レビューしていきましょう。ピュアオーディオと映画オーディオ(ホームシアター)との思想の違いについては、過去の記事を参考にしてください(これも古いけど)。

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基礎知識

ドルビーアトモス

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Dolby Atmos」と「DTS:X」の違い

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ARC・eARC

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レビュー

SONY HT-ST5000

まずは大正解のHT-ST5000、唯一の15万円以上カテゴリでほぼ対抗馬がいません。家電批評では当然の一位(コスパを考慮していないので当然)です。音質についてはほぼ妥協がなく、敢えて難点をあげるなら中音域の明瞭性がピュアオーディオ対比で物足りないですが、十分な音質です。予算が許すのであれば、ドルビーアトモス環境を作る最善の選択肢になると思いますが、明らかに性能対比で高価です。

あえて対抗馬をあげるのであれば、価格帯的にDALIのKatch Oneですが、これはどちらかというとピュアオーディオ寄りの製品で、立体音響の洪水に浸りたい映画ファンからすると、恐ろしく地味で面白みのない音が流れてくるだけの棒でしかないので、選択肢には入らないと思います。音についていえば、いつものDALIよりも、多少低音が強調されている一方で色気が失われた音でした。音楽視聴メインであれば聞いてほしいですが、やや割高感がありました。

ちなみに、本当に予算度外視、その他様々な困難に打ち克つ気があるなら、Sennheiser Ambeoという選択肢もあります。でも、そんな労力をものともしないのであれば、サウンドバー買うんじゃなくて、サラウンドシステムを組んだほうがいいです(し、そちらの方が安いです)。

アンベオサウンドバーglobal.shop.sennheiser.com

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追記:と書いていたら、なんと日本でもAmbeoが発売されるとのこと!ホームシアターサウンドバーガチ勢の本命がとうとう上陸ですね(2021/6/24)

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Panasonic SC-HTB900

テクニクスを復活して以降、躍進を続けるPanasonic。HTB900もテクニクスの設計思想を取れ入れたと銘打っています。機能的にはHDR10+やDolby Visionに対応していない点が将来的にネックになるかもしれません。音質は非常に素晴らしく、テクニクスらしさを随所に感じます。ただ、ピュアオーディオ的なこだわりを諦めなかったがゆえに、サウンドバーとしての特色である立体音響性能はやや弱めで没入感は限定的、これは求められる音の違いを理解していないがゆえの過ちなのかと思います。ピュアオーディオ的な哲学に基づいたシステムで映画を見ても、最強のシアター環境にはなりません。オーディオ環境とシアター環境とは別物と考えるべきです。説得的な音の明瞭さやサラウンド能力は素晴らしいので、DALIと同じく、音楽視聴メインであれば検討するべきサウンドバーです。

Sonos Arc

たしか日本に上陸したのは2018年、それ以降、たしかな音質とデザイン、接続性の高さによって人気になったSonosのサウンドバーArcです。予算10万円以上でドルビーアトモス環境を作りたければ、Arc一択になるかと思います(パナは厳密なアトモス環境ではないので)。高音の明瞭さはそれなりですが、低音がとにかく充実しており、映画サウンドかくあるべし、という印象です。上の二機種に比べると原音再生能力は控えめ、音像定位はやや不安定でした。映画サウンドに特化しているので、音楽視聴メインだと推奨レベルが1落ちますね。性能対比で適切な価格付けだと思います。パナソニックにはSonosを目指してほしいと思いました。学ぶところは多いはずです。

SHARP 8A-C22CX1

VGP2021、7.5万円以上の金賞受賞がSHARPサウンドバーです。SHARPといえば、1bitサウンドで一世を風靡したメーカーで、期待感があります。立体音響再生技術「OPSODIS(オプソーディス)」がどの程度没入感に効果があるか興味深かったです。結論から言えば、柔らかだけど明瞭さに欠ける高音、ぼやけた低音が致命的でした。OPSODISの恩恵なのか音像定位は巧いですが、一方で音場感や没入感は平均以下でした。これを買うなら、もう少し奮発してSonosを買うか、もう少し安いHT-G700を買ったほうがいいです。

Sony HT-G700

VGP2021、5万円以上の金賞受賞がSONYのHT-G700です。Sonosがいくらいいとは言っても、流石に10万円も出せない、そこまで自分は映画マニアでも音質ヲタクでもないという人は少なくないでしょう。それでは5万円は?とくにそれなりのお値段のテレビを使われているのであれば、音質にそれほどのこだわりがなかったとしても、5万円程度のサウンドバーは設置するべきです。そこで、おすすめなのがHT-G700です。ST5000は一般人からすると、半分ジョークのような製品かもしれませんが、G700は多くの人にとって極めて現実的で、コスパも満足度も高い選択肢です。

立体音響性能について、Sonosと比べればやはり価格なりの明確な差が存在するわけですが、しっかりとAtomos環境を構築できている点がパナソニックと異なるところです。音の明瞭さは大きな弱点で、重層的な音の聞き分けなどには適さないです。ただ、音像定位はしっかりとできていて、不満がありません。全体として、感動こそしないけど、そつなくいい映画サウンドを奏でるコスパに優れた優秀なサウンドバーです。

Sony HT-X8500

家電批評では実質(コスパを考慮すると)1位扱いを受けていたのがHT-X8500、VGP2021、3万円以上の金賞も受賞しています。音の広がりは限定的で、お値段それなりの印象ですが、しっかりとAtmos環境を構築できており、低音もライトユーザーには申し分ないです。低音は申し分ないのですが、やや響きすぎの嫌いがあり、中音域の不明瞭さを際立たせてしまっている点が残念です。メリハリの効き具合もG700とは大きな差があり、どの項目もやや物足りなく感じます。この価格でAtmos環境を構築している点は評価できますが、もう少し奮発してG700を買うべきだと思います。

Sonos Beam

 家電批評ではX8500に大きく水をあけられる結果に終わったSonosのBeam、VGPでは受賞すら逃しています。たしかにAtmos対応していないのは大きな欠点ですが、そこまで致命的なのか、といった点が興味深いです。結論から言えば、立体音響こそないものの、非常に満足度の高い音です。高音域がやや制御されていないものの、中音域は安定しており、低音域のパンチも効いています。たしかに音の広がりはいまいちで、没入感はほとんど得られませんがベースの音作りがしっかりしているので、それほど不満は感じませんでした。とくに音楽視聴メインの人におすすめしたいですね。

まとめ

ということで、シアターバー7種類を比較試聴しました。まとめておくと、

  • 予算と情熱が許すならSONYのHT-ST5000
  • 10万円以上、映画メインならSonos Arc、音楽メインならPanasonic SC-HTB900もあり
  • 5万円以上ならSony HT-G700
  • 5万円未満、映画メインならお金を貯めてHT-G700を買って。音楽メインならSonosのBeamは悪くない選択
  • ヤマハDolby Atomos・eARCとの兼ね合いで、今回は見送りました。

参考になれば幸いです!

夏のベストバイ 2021

HiViが6月号で夏のベストバイの特集をしていました。

今回は、特集のうち、スピーカー部門1(ペア10万円未満)について見ていきましょう。ペア10万円未満はこのブログでもよく扱っている価格帯なので、どのような製品がランクインするか楽しみでした。

1位は同率で2つあり、一つ目はイクリプスのTD307MK3です。

イクリプスは2018年にTD307MK2Aを試聴した以来なので、久しぶりの試聴ですね。MK3は2021年の4月に発売した最新機で、MK2Aから12部品がアップデートされています。最大の変更点は振動板を紙からグラスファイバーにしたところでしょう。

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イクリプスはタイムドメイン理論に基づく、明瞭性、空間再現力、スピード感を強みにしています。個人的に後の2点はあまりピンと来ないのですが、音の明瞭性、正確性は高く評価できます。グラスファイバーになったことで、より繊細な表現が可能になったと言われたら、納得しそうになりますが、2Aから大きく変わったかと言われると難しいところです(私の記憶の問題もあります)。まぁ、元から完成度が高かったので、音に不満はありません。サイズがあまり大きくないので、デスクトップオーディオにも適していると思います。 

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このMK3を5本+サブウーファーをセットにした5.1chパッケージは、ホームシアターのセットとして定評があります。前回はセットによるディスカウントがありませんでしたが、今回は多少のディスカウントがあったのが嬉しいポイントかもしれません。しかし、ウーファーをアップデートしなかったのは中途半端だった気もします。

同率の一位はソナス・ファベールのLumina Iです。

今年の前半、オーディオヲタクファンの耳目を最大に集めたのがこのスピーカーだったでしょう。ソナス・ファベール社は、1980年に「陸のヴェネツィア」と呼ばれる北イタリアの町ヴィチェンツァで創業されました。

現代のスピーカーは、工業製品としての完成度を高める方向に進化していたというのが個人的な理解で、KEFとかはその際たる例だと思うのです。求める音は高速のキレキレサウンドで高い解像度、音像定位がバッチリ決まって言うことがありません。

しかし、こうした方向性が万人を納得させるかというと、そうではないのがオーディオの面白さであり、懐の深さであり、奥深さであり、沼の深さです。私の知り合いで、とくにオールドファンの方などは、解像度やスピード感はあまり重視せず、温かみや音場感が大事だという方が少なくありません。温かみはともかく、音場感は音像定位と密接な関係があると思うのですが、ちょっと違うとのことです。原音忠実型と雰囲気重視型という最近どこかで見た用語で分類したいところですが、雰囲気重視というには個々の音に敏感すぎるので、こういう表現も難しい。ここでは便宜的に、彼(女)らをタンノイ型と呼んでおきましょう。

閑話休題、タンノイ型のオーディオファンを満足させるのは、時代の流れもあり、年々難しくなっています。2020年に試聴したFYNE AUDIOなんかは、タンノイ型の琴線に触れる音作りだったようで少し反応されていましたが、こうした機会は滅多にありません。

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さて、本題のソナス・ファベールです。ここまでの流れを読めば薄々感じると思いますが、ソナス・ファベールの音作りは工業製品よりは工芸品または楽器としての完成度を高める方向性を指向しており、紛れもなくタンノイ型が愛するそれ。低音はサイズなりでやや稠密感に欠けるものの、上品な音表現です。高音はキレこそないものの、絶妙な余韻が満足度を感じさせます。そして、艶やかなヴォーカルはこれぞタンノイ型の真骨頂とでもいうべきか。タンノイ型の人はもしかすると、この生々しさを音場感って表現しているのかもしれませんね。曲次第では、胃もたれするかもしれませんが笑。何にせよ、見た目の作り込みも美しく、まさしくタンノイ型の人が求めていたスピーカーだと思います。問題は入手が困難なことだけでしょう。

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3位以下ですが、3位がELACのDBR62、エントリーラインであるDebutシリーズの上位機です。ELACが個人的に好きなこともあって、Debutシリーズは割と評価しているんですが、問題は価格ですよね。本国の値段よりもかなり割高なせいで、どうしても日本ではコストパフォーマンスに劣ります。

4位がモニターオーディオのBronze 50-6G、明確な長所はないものの、そつのない優等生、そしてコストパフォーマンスがすごすぎますね。しかし、モニオの感想っていつ聞いても無個性以外に出てこない。

そして、5位は我らがKEFのQ350でした。Q350は何度も紹介しているので、当ブログの読者はおなじみですね。採点を見ると、レビュアーにタンノイ型が多かったのかな?あまり点数が伸びてなくて残念です。

その他、過去記事でピックアップしたQ Acousticsの3020iが11位、3030iが15位にランクイン。ダリのOBERONはOBERON3が7位、OBERON1が15位にランクイン。フォーカルのCHORA 806は11位でした。

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採点(レビュアーの構成)はやや不満でしたが、企画自体はなかなか面白かったです。